レイアヤから皆さんへ、お話ししたい事があります【緊急会見】#25
バタついた雰囲気とは、この事を言うのだろう。
大人たちが、スタジオのブースに沢山の人物がいる。
スタッフさんたちが走り回っていた。
準備が終わったと合図が出された。
「皆さんこんばんは。えー、これが我儘だとしても、誰かの心に残りたい。VCTE(バーチャル・クリエイティブ・タレント・エンタープライズ)所属、ヤマトノコトノハのゲーム担当、斑鳩レイと」
「はい。続いて同じく、あなたの心に咲かせる、一輪の可憐な百合の花、VCTE所属、ヤマトノコトノハの女の子担当、城ヶ崎アヤです」
ついに、私達が付き合っていることを公表する日がやってきた。
タイトルが物騒だが、この配信は、業界初のお付き合い報告会見である。
結婚に向けての一つ目の大きな山場を迎えたということだ。
今日の配信まで、VCTEの運営サイド、スタッフさん、そして、ヤマノハメンバーは勿論、事務所の同僚であり仲間である、他のライバー達への根回しをしてきた。
社長には、一人で頭を下げに行った事もあった。
彩さんをパートナーとして紹介させてくれと頼み込んだ。
彼女が、自分の人生を、自分自身を肯定できるようにさせてあげたい。私の愛する女性の全てを肯定したいんだと思いを伝えた。自分の中にあるものを全てぶつけた。
その為ならなんだってするという思いが表れた。
社長の土御門さんが口を開いた。
「じゃあ、そうねぇ、公式で交際記念会見しよっか……」
「本日は、私とアヤさんへ、皆さんから多数のお問い合わせがあった事柄についてお答えする機会をいただき、心より感謝いたします。ありがとうございます」
なんと、社長がノリノリで会見が決まったのである。
「えー、今回はですね、はい、寄せられた疑問につきまして、質疑応答を行っていこうかと思っております。今、画面の裏に記者の方々がいらっしゃいます。誠心誠意応えてまいります」
「宜しくお願い致します」
彩さんが頭を下げた。
まずは司会の方を呼び込んだ。
「これより、VCTE所属の綾小路・マイヨール・唱子が司会を務めさせていただきます」
「早速ですが、質疑応答に参りたいと思います」
「挙手していただき、所属とお名前をおっしゃっていただき質問の方をして頂きたいと思います。なお、会見の趣旨から明らかに逸脱した質問にはお応え致しません。ご了承下さい」
「では、髪の短い、はい、赤い髪でマニッシュな髪型のそちらの方……」
社長の仕掛けが始まった。
ここにいるのは記者ではないのである。
「えー、あ、あ、ごほん、ヤマノハ新聞の獅子堂ですぅ……えぇ、まずはお二人に、馴れ初めなんかを教えて頂きたいと思います。どんな感じだったんでしょうか」
このふざけた声色は蒼真だ。
周りをよく見て、チョケ役に回ってくれる蒼真はかっこいいよ。
一応は記者という設定になっている。
そう、ここにいるのはライバーしか居ないのである。
「まずは私、斑鳩レイからお応えさせていただきます。実は私は、デビューする前からアヤさんを追っていてですね、よくよく考えたところ、アヤさんに憧れて事務所に入ったといって良いほどの存在であると言えます。ヤマノハとして顔を合わせてから、より親交を深めていき、交際に至ったという感じですね。ゆっくりと関係を深めていくのは楽しかったですね」
「続いて城ヶ崎アヤからお応えします。出会いは同じくグループでの顔合わせをした時ですね。最初の出会いから惹かれるものがあったのかも知れませんか、レイちゃんの優しさ、根本にある、物事に真摯に向き合う人柄をそばでずっと見ていて、レイちゃんに隣りにいてほしいなと思うようになっていったんです。ちなみに、付き合い始めることになった告白はレイちゃんからでしたよ」
やっと少し笑いが起こった。
「斑鳩さんは積極的だった、ということですね。ありがとうございます。続いて、ご質問のある方は、紫色のショートカットの方いかがでしょう」
次はモガ。いつものユーモアは封印してくれるようだ。
祝いに来てくれたのが嬉しい。
「デイリー・ヤマノハの如月でございます。ではお二人に質問です。馴れ初めと重複する内容かもしれませんが、お互いの一番好きなところをお聞かせいただきたいと思います」
次はアヤさんから。
「えー、そうですね。あの、とにかく優しいところですね。人のことをよく見ていますし、なんといいますか、私のことを気遣ってくれているんだなと思うとときめいてしまいますね」
「うわ、なんか照れますねこれ……」
「そうだね、うん……」
二人で顔を見合わせてしまった。
「じゃあ、次に私ですが、好きなところを一つに絞るのは難しいですね。うーん、私は、アヤさんを形作っている全てを愛しています。存在そのものが既に尊いので。ですから、敢えて質問に即していいますと、全部好きということですね」
混乱していたコメント欄が落ち着きを見せ始めた。
「お互いを慕い合っているのが伝わってきました。なんか、良かったね、アヤ……。では続いて、黄色い髪色でサイドテールの方に伺きたいと思います」
「はい!こいぞら新聞社です!レイさん!ずばり、お付き合いを始めたのはいつからでしょうか!」
メロちすぎるってw
聞いたことしかない声
バレバレですw
レイアヤとめぐメロ揃って豪華だ
「えー、斑鳩です。知り合いにそっくりな素敵な声ですね。明確にこの日というのは難しいですが、GL台詞読み上げ枠のあとですかね。その、放送が終わった後にですね、気持ちを伝えるなら今しかないと思って、お付き合いさせてほしいという意思を伝えさせてもらいました」
「foooo!ごちそうさまです!お幸せに!」
いい後輩ができたなぁ……
泣かせてくれるね。ありがとう。
「喜ばしいことですね。素敵なご質問、ありがとうございます。では、流れで、お隣の青みがかった紫の髪色のポニーテールの方、いかがでしょうか」
め、めぐる?泣いてる?
「フリーライターの石動です。あの、ええっと、すいません。えー、はい。一オタクとしてですね、お二人見てたら、泣けてきちゃってですね、ぐす……お幸せになって下さい……おべでどうございばす……さいこうです……!」
めぐる……。
お前は本当にいいやつだよ。
「会見って体忘れてるし、ま、しょうがないか。で、はい、では、えーっと、はい。次は白百合な」
お忙しい中、前日の声掛けにも関わらず、アヤさんをお祝いしたいと急遽駆けつけてくれた。
「ちょっとw呼ばないでよ白百合って、ええ、白百合ともえです。レイちゃんアヤちゃん、この度はおめでとうって言ったほうがいいのかな。良い人と出会えて良かったね。後輩ちゃんであるというひいき目もあるけど、レイちゃんは素晴らしい人だと思います。お二人のより良い未来を願っています」
「今回、交際を発表するということは勇気のいる決断だったと思います。それでも声を上げてくれたことで少しでも救われる方もいるといいなって思っています」
「人としてお二人を尊敬しています。改めて、交際記念配信、おめでとうございました」
ともえさんは、バイセクシャルであることを公表している。
アヤさんが直接、ともえさんに出演をお願いした。一時期、関係が悪化していたが、歩み寄ることで関係を修復してみせた結果である。というストーリーも記憶していてほしい。
そのともえさんが連帯をしてくれていることに感謝したいと思う。
「えぇ、では質疑応答を終えようと思います。ありがとうございました」
私とアヤさんは頭を下げた。
「続きまして、弊社社長、土御門よりご挨拶申し上げ、会見の最後の終わりの言葉とさせていただきます」
ここから実写となる。
ライバーはカメラの裏にいる。
「VCTE社長、土御門綾華です。交際という個人的な内容を、公式放送で扱うのは不適当ではないかというご意見をコメント頂いておりますが、女性同士のカップルであるという、センシティブで配慮の必要がある話題であること、弊社タレントの城ヶ崎アヤが、一部視聴者、ネット上、またはSNS上からの悪質な誹謗中傷をうけているということを考慮した結果の決断であります」
「弊社と致しまして、タレントを守るという観点から、彼女の個人の尊厳を守るという姿勢を堅持するという思いを明確に表現する必要を感じ、この場を設けさせていただきました」
「弊社ならびに私個人と致しましても、城ヶ崎は大切な我社のタレントであります。今より、度を越したタレントへの言動に対し、毅然とした対応を執ってまいります」
「ええ、長々とした挨拶ではありましたが、ご静聴ありがとうございました」
ライブ配信は終了しました。
Vtuber同士の私達がリアルの世界で本当に結婚に至ったワケ 鬱崎ヱメル @emeru442
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