第11話
「あっ」
そっとドアを開けると、フワッと懐かしい香りがあたしを包んだ。だが、それよりも驚くべき事が一つ。
「お父さんだ」
大きなベッドで二人が横になっている。一人はお母さんでもう一人はお父さん。二人ともぐっすりと寝ていて、寝ている姿は昨日の面影は無く、いつものあたしの大好きな二人だ。
そんな二人を見ながら、あたしは身体の力を抜いた。
——正確には抜けてしまった、だ。
ホッとしたのかもしれない。いつも通りの二人には自然と笑顔になってしまう。あたしはお母さんもお父さんも大大大大大大好きだ。将来の夢はお母さんでお父さんと結婚すると言ったあたしだ。
それくらい大好きな二人が、一緒に仲良さそうに、寝ている姿を見ればあたしは元気になる。
微笑ましいとはこの事だ。
麗の言う天国に行けと言われても、今なら何も心残り無く行ける気がする。それくらい今、目の前の光景はあたしにとって宝物のような物だった。
——だけど、それじゃいけない。
それじゃあ根本的な解決にはならない。一時の安心じゃ心残りが再発してしまう。お母さんをずっとこの安心して見てられる状態にしなければならない。
だから、あたしは頑張るんだ。
「待っててねお母さん、お父さん」
最後にあたしは二人にそう言って、静かに部屋を出た。
出た直後、あたしは手を胸に押し当てて目を瞑った。
目を瞑って見えるのは、今見た二人の寝ている光景だ。一生忘れないように、記憶の中に保存しておくんだ。
あたしの精神がおかしくなっても、これを思い出せば回復できるように。
「ふぅぅぅ」
あたしはゆっくりと長く息を吐いた。
そして——、
「よしっ」
それはあたしの今日の始まりを意味する物だった。
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