宝物
第10話
こうして、律花と麗はお母さんの観察。そして救う手立てを考えることにした。時間は無いが、ここで焦っても何も産まない。それが二人の共通認識で、二人とも慎重に行動していた。
タイムリミットは一週間と決めたが、それ以降になる確率は非常に高かった。
その間、二人は律花宅で過ごすことに決めた。
「一日目だね」
朝、そんな声であたしは目が覚めた。
昨日は色々とイレギュラーなことが起こって疲れていたのか、あたしはぐっすりと寝れた。それ以前に、この場所だからだろうか。
あたしは自分のベッドをもふもふと押し、優しく微笑んだ。
「おはよう麗」
カーテンを開ける麗にそう声をかけたあたしは、立ち上がった。
「おはよう律花。よく眠れたかい?」
「そりゃあ、もう」
「それは良かった」
昨日は寝ないと言っていた麗だが、なぜそんなに元気なのだろうか。やっぱり人ではないのだろうか。
まあ、麗が人でなくても、あたしは麗に感謝し続けるよ。
「ん?何か口についてる?」
「ううん」
麗の顔を眺めるあたしの視線に気づいた麗が心配そうに自分の顔を触る。
そんな麗を眺めながら、あたしは「何か付くようなことしてないでしょ」と、揶揄うように麗に言う。
そんな麗は「それもそっか」と安心したように言い、カーテンを綺麗に整え始めた。
麗と出会って何年も経っていないが、麗といる時は安心感を覚える。それがどこから来るのか分からないが、不思議な感覚だ。
ずっと麗と居たいような、そんな事を思うが、いつかは離れなけれならない、そう決まってしまった未来を思うと寂しい気持ちになる。
考えないようにしていても、どこからか湧き出てきてしまう。
「どうかした?」
「ううん。お母さんのこと見てくるね」
「そっか」
麗は優しい少年だ。オーラがそう言ってくる。昨日の印象とは360度違う。それは麗を知ったから言えることだ。
白く透き通る肌も、最初の冷たいイメージとは違い、綺麗で優しい白に見える。そんな麗の違いは、絶対に初見では分からない。だから、麗は守りたくなってしまうような、そんな母性に似たものを向けてしまう。たとえ守る事を否定されても、麗の本当の姿を今すぐにでも全世界に伝えたい。
「——」
部屋を出たあたしは、ドアに寄りかかりながらそんな事を思っていた。
好きとは違う不思議な気持ち。それに微笑みながら、あたしは手に力を入れて胸を叩いた。あたしなりの気合いの入れ方だ。
——今から見るものはあたしにとってショックなものだ。
それなのに、気合いを入れずに見に行ってしまったら、昨日のように混乱して泣き叫んでしまう。だから、あたしは気合いを入れる。
「よしっ!」
軽くジャンプして、あたしはお母さんたちの寝室に向かった。
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