プロローグ 五章

 液体が抜け落ちると、初めて重力の重さを実感し、咳き込むような産声を発した。


 榮ビルの地下にある研究室。


 僕と同じ顔の赤ん坊の入ったカプセルが部屋の両側に幾つも並んでいる。


 肌に触れたガラスの床は硬く、どこから吹き出す風が幼い身体を冷やしていく。


 人生は生まれた瞬間からすべてが決まっている。


 ニュートン力学で語るなら、マクロな世界では原理的に〝未来は決まっている〟と考えられている。


 照明の眩い光で数人の人影が囲むように映る。


 僕は生まれた瞬間から自分と他者の存在を認知し、親の顔というものを知った。


 赤ん坊らしからぬ態度に彼らは驚愕しながらも歓喜した。


「——第一段階は成功した」


 僕は生まれながらの成功者。


 しかし、これは始めから決まっていたことなのだろう……。


 この先も全て決まっていたことで、この意思や感情すらも予測できる代物に過ぎない。


 いつからだったか。俺は運命なんて存在しないと証明がしたくなった。


 この感情も、思考も、出会いも、間違っているのだと証明がしたい。


 だって、それじゃあ面白くないじゃないか。


 量子論で語るなら、ミクロな世界ではつねに一定の不確定性があって〝未来は決まっていない〟と考えられている。


 なら、この思いはきっと……。


 


 ——本物のはずなのだ。

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