第35話:帰還と休日

 月面での戦いを終えた俺達は青き地球へと帰還した。


 「あ~~~っ! やっぱ、地上で日光浴びるの最高♪」


 窓を開けて部屋に日光を取り入れる。

 赤い甚兵衛姿で体を伸ばす。


 「ピヨ~~♪ ロボの外は気持ち良いピヨ~♪」

 「あれ、もしかしなくてもあんた多分ヒノエだよな?」

 「灯希が人間になれと言ったから、なったピヨ♪」


 たぬきみたいな丸顔で太眉、髪も瞳も着物も赤い美少女がいた。

 魂が繋がっているので相棒のテンセイビースト、ヒノエだとわかる。

 

 わかるけど、いきなり人化されたらちょっと待てとは言いたくなる。


 髪型は、頭頂部をデカい団子でまとめてる。

 鳥だからもっとド派手なのかと思った。


 いや、旅館の仲居さんとか? その服装?


 「そうか、まあなれてもおかしくないな」

 「で、今日はどうするピヨ?」

 「いや、何も決まってねえなあ?」


 炎太郎さんの舞台の公演はまだ先だ。


 「そのチケット、ペアチケットピヨね?」

 「今の所、ヒノエ以外いないな」

 「黄河さんとか永遠さんとか黒羽さんに、ローズレッドさんとかは?」

 「うん、誰を選んでも地雷になりそうな選択肢はやめないか?」


 黄河さんも永遠さんもお嬢様で、どう誘えと?

 ローズレッドも神戸だろ? 

 師範代、黒羽さんは連絡したら山に連れて行かれて帰れる自信がない。

 ヒノエと遊びに行くのが安牌じゃねえか?


 「まあ、リサーチしてから考えよう」

 「先送りスキルは発動しない方が良いピヨ?」

 「そう言うんじゃねえから!」


 恋愛でサークルクラッシュとかあかん。

 恋や愛は世界を守りながら育まないと。


 「ブヒヒ~~~ン♪ 清丸様~~~♪ あなたの愛馬でございます~♪」

 「何でスイレンが、人間になってるんだよ~!」

 「ブヒヒ~~ン♪」


 隣の清丸の家から絶叫が鳴り響く。

 まあ、馬は暴れる物だから仕方ないな。


 「取り敢えず、うどんでも食うかな?」

 「月見うどんにするピヨ♪」


 俺とヒノエは部屋を出て一階の食卓へと降りる。

 今日は平和にうどんでも食ってのんびりしたい。

 GWも戦いだったし、久しぶりのオフだ。


 「父さん達は病院だな」

 「家族が増えるピヨね♪」


 ヒノエが両親や祖父母を青年レベルまで若返らせた結果。

 両親も祖父母も新たに子に恵まれたのだ。


 「祖父ちゃん、若返ってからノリノリで剣を振るうようになったな」

 「人生を楽しんでもらうのが、何よりピヨ♪」


 ヒノエが丼とか用意しながら微笑む。

 うん、元気で生きるのが何よりだよな。

 前世の世界は、タタキアンに誰もが人生中断されたからな。


 「灯希、悲しい目をしてるピヨ」

 「いやなあ、前世の世界が滅んだのと今の家族が人生謳歌してるギャップが」


 前世の家族もどこかで生まれ変わって人生を楽しんで欲しい。


 「お祖父さんもヒーローになったピヨね?」

 「ああ、驚いたが家の収入減が増えた♪」


 元警官で剣道の先生していた祖父。

 若返ったのを機会に年齢制限のない、宇宙の警察コスモポリスへと再就職。

 メタリックなヒーローとして人生を再スタートしていた。

 俺もギャラを家に入れるようにしたが、稼ぎは多い方が良い。


 「考え事は止めて、料理ピヨ♪」

 「おう、冷凍うどんで手軽に行くぜ♪」


 ヒノエと共に冷蔵庫から食材を取り出し台所で調理開始。

 具にする鳥肉や野菜のカット、鍋に水を入れて面を投入し煮込む。


 「おっしゃ、ささみを鍋に入れるぜ♪」

 「野菜も入れるピヨ♪」


 冷凍うどんを茹でている鍋に鶏肉やホウレン草などを追加投入。

 スープは市販の醤油味、今日は拘らない。


 うどんが出来れば盛り付けて食卓でヒノエと隣で食う。


 「ふう、こう言うのも美味いな♪」

 「私の火で作ったから当然ピヨ♪」


 ガス代ゼロ円で調理である。

 簡素だけど飯を食って美味いと言える、生きてるって素晴らしい。


 「ふう、神も人も命栄えよ永久にだな♪」

 「懐かしいフレーズピヨ~♪」

 「何だっけ、これ?」

 「太陽教団の教えピヨ~♪」

 「あ、何か脳に映像が流れて来た」

 「私の記憶ピヨ~♪」


 俺の目にファンタジーRPGみたいな映像が映る。

 石造りにレッドカーペットの神殿、帽子も衣も赤の神官の前に跪く騎士は俺か?

 天から降臨した火の鳥はヒノエか、きちんと引き締まった火の鳥だ。

 懐かしくも暖かい記憶だ。


 「懐かしいな、ファイナースを蘇らせたりできないかな?」

 「多分、今の皓地球がファインアースや皆の前世の世界の生まれ変わりピヨ」

 「そうか~~♪ だからあいつらと出会えたとなると納得だな~♪」


 ヒノエの言葉は当たりではと思う。

 再びファインアースに転生するはずだった永遠さんが、地球に生まれ変わった。

 戦隊仲間が他の異世界からの転生者だった。

 この地球が、俺達全員の滅ぼされた前世の世界の集合転生体ならあり得る。


 「ならば、猶更守り抜かねえと行けねえな♪」

 「そうピヨ、今度こそリベンジして楽しい未来を掴むピヨ♪」


 過去の世界は取り戻せないけど、もう二度と滅ぼさせない為に奴らを完全に倒す。

 俺達の戦いは只の復讐じゃねえ、未来を守る防衛戦だ。

 俺達が勝った後、奴らが蘇って来るならまた叩き潰す。


 「ふう、こうして落ち着いて考えるってのも大事だな♪」

 「まあ、この考えはあの博士に話してからの方が良いピヨね」

 「ああ、俺じゃあ何言ってるんだで終わりそうだ♪」


 悲しいが、戦闘以外だと仲間からの発言の信用度が低い。

 後片をしてから、ヒノエと商店街へ買い出しに出かける。


 「スイレン、走るなら公園にしてくれ~!」

 「ブヒヒ~ン♪ 愛の暴走です~♪」


 目の前を通り過ぎたのは青ジャージ姿の清丸。

 同じく青ジャージ姿の青髪で馬耳の美少女に背負われ爆走していた。


 「うん、どうしようもないなこれは」

 「仲が良いのは大事ピヨ♪」


 すまん親友、あれは邪魔したら蹴り飛ばされる。

 他の仲間達のオフは、下手にエンカウントしない方が良いな。

 そして、外は良い天気だし俺も休みを楽しみたい。


 「灯希、何かあっちで黒い炎が見えたピヨ!」

 「おいおい、なら行くしかねえなテンセイチェンジ!」


 買い物はお預け、買い物かごは異次元ボックスに入れて俺はヒノエとハイタッチ。

 二人で一人のテンセイレッドに変身し、炎の翼を広げて飛び上がる。

 上空から俯瞰し事件を探すと、あちこちでヒーローと怪人がバトルしていた。


 「現金大量に、いただ金庫~~~♪」


 郵便局から容器に叫びながら飛び出した怪人を見つける。

 盗んだ現金を顔の金庫に放り込みながら逃走するのは金庫怪人。


 「ちょっと待った~~!」


 俺は金庫怪人の目の前に急降下して立ち塞がる。


 「げげ! 貴様は賞金首のヒーロー!」

 「ほう、悪党にも賞金稼ぎがあるとは迷惑だな!」

 「テンセイレッド、貴様の首の賞金五百万円いただく金庫~♪」


 どこの組織化Ⓗ知らないが金庫怪人がバールを装備して襲い掛かる。


 「ふざけるな、フェニックスカリバー!」


 剣でバールを受けると同時に刃を赤熱化。

 相手の武器にも熱を伝える。


 「熱っ!」


 金庫怪人がバールを手放して落とした。


 「は、終わりだヒートピアース!」


 赤熱化した剣で怪人の胸を突き引き抜く。


 「お、おのれ~~っ!」


 倒れ込んで動かなくなる怪人。

 怪人の金庫を開けたら現金が履いていたので回収。

 その上で警察を呼ぶ。


 「ご苦労様です、そのお金は?」

 「怪人が郵便局から盗んだお金を拾ったので、届け出ます」

 「ああ、了解しました♪」

 「ええ、被害者の郵便局さんに必ず返還をお願いします」


 やって来たお巡りさんに、怪人が盗んだ金を落とし物として届ける。

 でないと押収されて被害者にお金が戻らない。


 そんな感じで休みではありつつも、事件解決と処理に追われたのであった。

 

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