第4話『部屋のドア開けたら、そこが満員電車の中だった件』

※不定期更新ですが、ふとしたときに開くドアのように、また新しい話が増えていきます。


***

 朝、目覚めると世界はまだ静かだった。

 カーテンの隙間から差し込む光、枕元のスマホには**「午前6時23分」**の表示。


「……あと10分だけ寝よ……」


 そう思いながら、のどが渇いたのでリビングにでも行こうと部屋のドアを開けた――


「……ん?」


 開けた瞬間、顔面にネクタイがめり込んだ。



 ***


「おい、押すなよ!」「次の駅まだかよ!」


「……………は?」


 目の前、いや、部屋のドアの先が満員電車だった。

 ぎゅうぎゅう詰め。湿度100%。圧と香水のハーモニー。


 そして僕は、完全なるパジャマ姿。


 ***


「え、なんで!?てかどこ!?俺の部屋のドアどこ!?」


 慌てて振り向くと、さっきまでいた自分の部屋はもう見えず、

 代わりに広告でごった返した車内と、ドアに映る自分の寝癖ヘア。


 ***


「……え?これ、通勤電車って異世界だったの?」


 突然、隣のサラリーマンがぼそっと言った。


「新人か……?この電車、月曜の朝に寝ぼけてると吸い込まれるんだよ」


「いや、そんな都市伝説みたいなことある!?」


 ***


 次の駅でドアが開いた瞬間、僕はとっさに外に飛び出した。


「よし、脱出……って、え、ここどこ?」


 そこは――


 コンビニの冷凍食品コーナーだった。


 ***


 その日から僕は知った。

 **“月曜の朝、ドアを開けると、日常は移動している”**ということを。



 ~完~


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