第2話『なぜかヨーグルト臭のする沼に迷い込んだ件』

※不定期更新ですが、ふとしたときに開くドアのように、また新しい話が増えていきます。


***


 午後3時。コンビニの帰り道。


「……ん?なんか、甘酸っぱい匂いしない?」


 ふと立ち止まると、風がふわっと鼻をくすぐった。

 ヨーグルト……いや、正確にはプレーンヨーグルトに、微妙にブルーベリーを混ぜた感じの匂い。


 そんなもの、住宅街のど真ん中で匂ってくるはずがない。


「え、ヨーグルトって…土から湧くタイプだったっけ?」


 疑問を抱えつつ、匂いの方向へ歩いていくと、

 見慣れた公園の奥、普段は誰も入らない草むらの奥に――


 白濁した沼が、ぷくぷくしていた。



 ***


「ちょ、待って?

 こんなん絶対“ミルク系怪異”でしょ!?『見るな、嗅ぐな、近づくな』の三原則どこ行ったの!?」


 逃げようとした瞬間、ぬるっとした声が背後から聞こえた。


「あなた……ようやく来ましたね、我が“発酵の勇者”よ……」


 振り返ると、全身乳白色のローブをまとった謎の女性が立っていた。

 頭にヨーグルトのふたっぽい装飾。手にはスプーン。

 まさかのヨーグルト教団の巫女。



 ***


「あなたの腸内環境、乱れているでしょう。さあ、沼へ――」


「入らねぇよ!!てかなんで知ってんの!?」



 ***


 その日から、主人公のスマホには「本日の乳酸菌ポイント」が通知されるようになった。

 毎日10ポイント貯めると、沼から“なにか”が出てくるらしい。



 ***


 ~完~



 ***

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る