摩訶不思議な体験 〜ゆる不思議短編集〜

水月 りか

第1話『今日、林からたくわんの匂いがした。』

※不定期更新ですが、ふとしたときに開くドアのように、また新しい話が増えていくようにしてます。


***


 朝の散歩道、いつも通りの小道。

 リスが走り、鳥がさえずり、木漏れ日がきらきら……してるはずだった。


 でも、今日だけは――


「……え、たくわん?」


 風に乗ってやってきたのは、あの懐かしの匂い。

 小学生のころ、おばあちゃん家で食べたやつ。 

 パリッとした歯ごたえの、あの黄色いやつ。


「いやいやいや、林だよ?ここ、自然の楽園だよ?たくわん生えてたらおかしいでしょ」


 自分にツッコみながらも、どうしても気になる。

 だって、匂いはどんどん濃くなっていく。林の奥へ進めば進むほど。



 ***


 そして現れたのは――

 **「漬け物バリアをまとうカモシカ」**だった。


「キュウリ派は帰れ……パリポリ……」


 たくわんを口にくわえたカモシカが、哲学者みたいな顔で語りかけてきた。



 ***


「あなたは……たくわんの守り神?」


「いや、ただのグルメだ。」



 ***


 その日から、林は「たくわんの森」と呼ばれるようになった。

 地元の小学生たちは遠足でそこを訪れ、帰り道にこう言うのだ。


「ねえ、先生……おにぎりに入ってた、アレ……林の匂いに似てるね!」



 ***


 ~完~



 ***

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