第15話


カクヨム 第1話。再会の予感 (第2部開始 / 改訂版)


(第2部。菜々美、過去を追う。)


(シーン:ナイトクラブ “エデン”。深夜。重低音が響き、ミラーボールが妖しく光を放つ。菜々美はフロアを忙しく動き回り、客の注文を取っている。)


菜々美は生活のため、夜はナイトクラブでアルバイトをしている。ある日、いつものようにフロアを巡回していると、ふと、聞き覚えのある名前が耳に入ってきた。


(女性客A): ねえ、聞いた?あのデザイナーの、こずえシノハラって。


(女性客B): ああ、あの才能あふれる人ね!最近、すごく話題になってるじゃない。


菜々美は、その名前にハッとした。こずえシノハラ…どこかで聞いたことがあるような気がする。


(菜々美、心の中で): こずえシノハラ…一体、誰なんだろう?


勤務を終え、休憩に入った菜々美は、バックヤードでタバコを燻らせているケンジを見つけた。


菜々美: ケンジさん、ちょっといいですか?


ケンジ: よっ、菜々美ちゃん。どうした?疲れてるみたいだな。


菜々美: 実は、少し気になることがあって…。ケンジさん、昔、この店で働いていた、シノハラって女性を覚えてますか?


ケンジは、少し考えてから、


ケンジ: シノハラ…?あー、いたいた!確か、スタイルが良くて、ちょっとツンとした感じの子だったな。デザイナーを目指してるって、熱心に話してたっけ。


菜々美: そのシノハラさんについて、何か覚えてることありませんか?本名とか、出身地とか…


ケンジは、肩をすくめた。


ケンジ: 悪いけど、あんまり覚えてないんだよ。ウチの店は、そういうの、深く聞かないのがルールだし。源氏名で働いている子も多いからね。でも、確かにシノハラって名前だったと思うよ。


菜々美: そうですか…。少しでも何か手がかりがあればと思ったんですが…。


ケンジ: うーん…そうだなぁ…あの子、意外と熱いハートの持ち主だったよ。デザイナーになるっていう夢を、本当に真剣に語ってたから。


菜々美は、ケンジの言葉を聞きながら、胸の奥にざわめきを感じていた。その時、もう一人、菜々美の心に引っかかる人物がいた。以前、偶然出会った、才能あふれる刺繍作家、篠原七海だ。もし、この二人が同一人物だったら…?


菜々美: (心の中で): そんなこと、ありえない…でも…


その夜、菜々美は、家に帰ってから、インターネットで「こずえシノハラ」について検索してみた。すると、彼女は、最近、デザイン業界で注目されている、新進気鋭のデザイナーであることが分かった。


(菜々美、心の中で): やっぱり、あの時の…?


さらに詳しく調べていくと、こずえシノハラという名前が、かつて篠原七海と名乗っていた時期もあったという情報を見つけた。


(菜々美、心の中で): やっぱり、同一人物だったんだ…でも、どうして名前を変えたんだろう?


篠原七海。こずえシノハラ。そして、ナイトクラブで熱く夢を語っていた、あの女性。菜々美の中で、様々な点が線で結ばれていく。しかし、同時に、新たな疑問も湧き上がってきた。彼女は、なぜナイトクラブで働いていたのか?そして、なぜ名前を変えたのか?


その時、菜々美の携帯電話が鳴った。画面には、「ミサキ」と表示されている。ミサキは、以前、菜々美と同じナイトクラブで働いていた、数少ない友人だった。


菜々美: ミサキ?どうしたの?


ミサキ: 菜々美、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…。


ミサキの声は、どこか深刻だった。


ミサキ: こずえシノハラって、知ってる?


菜々美: ええ、知ってるわ。今、ちょうど調べていたところなの。


ミサキ: 実はね、そのこずえシノハラが、昔、この店で働いていたらしいのよ。


菜々美は、息を呑んだ。


菜々美: どうして、それを知ってるの?


ミサキ: 今日、昔の同僚とばったり会って、その人が教えてくれたの。彼女、そのシノハラと仲が良かったみたいで…。


ミサキの言葉に、菜々美の胸は高鳴った。


菜々美: その同僚に、もう少し詳しく話を聞いてもらえないかしら?篠原七海、いや、こずえシノハラのことを、もっと知りたいの。


ミサキ: 分かったわ。明日、連絡してみる。


菜々美は、電話を切ると、窓の外を見つめた。夜空には、満月が輝いていた。


(菜々美、心の中で): いったい、何が始まるんだろう…


菜々美は、篠原七海の過去を追うことを決意した。その先に、何が待ち受けているのか、まだ何も分からなかった。しかし、確かなことは、彼女の人生が大きく変わろうとしている、ということだった。


(続く)

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