B面

 この国の「ぺ」問題が、今さっき、ようやく終結した。

 内戦の終結。政府は倒れ、国連は大騒ぎ。俺はニュースを複雑な気分で見ている。


 目、鼻、口、耳、ぺ。

 俺は生まれつき顔に「ぺ」がなかった。両親ともユペ族なのに。

「う、う、うちの家から、ムペ族の子が出るなんて」

 父はそう言ったことだろう。知らない。俺は父母に会ったことがないから。

 俺は捨てられて、平凡なムペ族として暮らした。

 今でこそ、エッセイストという贅沢な仕事で飯を食えているが、ご存じの通り、もともとムペ族には文字すらなかった。解放戦線サマサマだ。


 圧政からの解放の日。

 この国のユペ族は、気取った邸宅から引きずり出され、なぶり殺しにされる。

 年齢、性別にかかわらず、「ぺ」がある奴は皆殺し。ムペ族の腕章は市民の証になった。

 

 革命だ。俺は拳を上げて街に出る。

 ユペ族惨殺ショーが各地で開催中。街路樹に吊し上げられるユペ顔の家族。

 とはいえ、俺は生粋のムペ族とは違う。ユペ族生まれの屈折した生い立ちだから、俺の目に宿るのは、憎悪というより好奇心。

「俺の親、どれかな」

 罪人たちの顔を見て回る。どれも俺の顔立ちには似てない気がする。


 なんせ彼らはユペ族だ。

 奴らの血まみれの顔には、目、鼻、口、耳、ぺ。



 で、「ぺ」って何なんだろう。

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