人間の持つ「業」とか、精神の深いところを抉ってくる作品でした。
主人公は、「居場所がない」という絶望感を抱えながら海を訪れる。そこで一人の女と遭遇するが、直後に海を割って巨大な醜い怪物が姿を現す。
恐れおののく男だったが、女は平然としている。そしてその怪物が「どんなもの」なのかを語ってくる。
孤独を嫌がる心。それを見たそうとして他人に依存し、他人に期待し、他人を利用したがる心。
そういう誰にでも多かれ少なかれある心理。そういう何かがこの怪物の出現とも関連しているらしい。
怪物の醜悪で、あまりにも浅ましい姿。その存在がなんらかの「象徴」として描かれて行くことになります。
人間の心の中にある衝動とか欲望などが形を取ったなら、そういう巨大で狂暴で醜悪な怪物の姿を取るのかもしれない。
怪物を通し、自分の内面にある「どうしようもなさ」を突きつけられる男。
読んだ後、色々と考えさせられました。「孤独な時、人は他人に何を求めてしまうか」、「孤独な状態に堪えかねて、あまりにも多くのことを他者に期待しすぎて、誰かを食いつぶしてしまうようなこともあるのではないか」
狂暴な人食いの怪物みたいなものが誰の心の中にもあるのかもしれない。そんなテーマが描き出されているように感じられました。
果たして、男の見たものは現実だったのか。それとも自分の内面を投影した白昼夢でも見ていたのか。
迷妄としながらも、どこか厳しく切りつけてくるような、そんな鋭さのある一作でした。