世界観

名前

 登場人物の名前が漢字と片仮名に呼び分けられている。大抵の者は片仮名で表記され、漢字の名は、高貴な身分の者や、純然と力ある者のみが持つことを許される。西洋においては中間名を用いて格を表す文化が近い。

 枯葩家においてはその基準が高く、術師の名家において天才と謳われていたカズサでさえ、嫁いでからは漢字の名を片仮名に格下げされている。


人間と妖魔

 本作において、“人間”と“妖魔”という大きく二つの種族が登場する。

 弱く、集団でこそ力を発揮するのが人間だとすれば、妖魔は個として強く万能であると言える。ただしそれは基本則であり、例外と言うものが多数存在すると把握しておくべきだろう。個として妖魔に匹敵、或いは凌駕する人間について後述する。

 人間は大抵の場合、妖魔に対して敵対的であるが、妖魔側としては敵対、友好、依存など多様な認識を持つ。妖魔は人類文明の発達と共に進化しており、国際規模で社会を震撼させる程の脅威となっている。例えば、あらゆる暗号を解いてしまう電子毒を撒き散らし、戦争の撃鉄を引きかけたものや、核爆発の熱量を糧に羽化した神威の蝉すらも。

 妖魔は日本の京都を中心とした世界中で、“常夜とこよ”と言う異空間に棲息している。京都が最も多く、その反対側の南亜米利加アメリカでは最少ということ。しかし、日本から離れた外国程、魔境たる京都に近く強力な個体が確認される傾向がある。理論上は地球外にも妖魔が分布しているのではないかと提言されているが、宇宙は妖異的観測が発展途上であるため、未知数の領域である。極稀な例として、【百鬼ひゃっきすさぶる霊験れいけんみね】の大神は、幾光年と離れた常夜から地球の山々に神隠しを掛けたことが観測された。

 人間の中にも“チカラ”を持つ者がいる。東洋では“仙人”、西洋では“半神”や“魔術師”と古くは呼ばれていた。現代では“術師”と呼称される。術師と妖魔、またそれに準ずる存在を“妖異”と総称する。術師は妖魔に匹敵する威力を振るい、妖魔と同じく天井知らずの可能性が存在する。その都合、流儀や気紛れによって只人は妖異から護られている。孤高を好む彼らは社会に属することを嫌うが、諸国は彼らとの対等を認める代わりに国籍を与えることで、妖異に対抗する上での協力を求める。


英傑

 人間と妖魔、双方にいて、伝説的としか形容しようのない活躍で魅せる者。

 森羅万象を左右する戦線の最前に在り、数多の曼荼羅まんだらに彼らの姿が描かれている。常人には想像も至らない華々しい生涯を往く、遥か飛び越えた雲上の存在。勿論のこと極稀にしか現れず、太古には“開闢から滅亡までに一つ現るか否か”と伝えられていたが、この数十万年で激増している。日本国内だけで百名余りが確認されており、地球全土では一千名弱が現存すると推定される。この傾向は、終焉が間近に迫っているが故の“摂理”であると論じられている。

⁑作中該当者

枯葩家:邑仁、詠風羽姫、正悟、結寿葉

別時空の枯葩家:邑仁、詠風羽姫、嚇盈、弦雅


対妖異勢力

 人類が妖魔や術師に対抗するべく築いた現世の砦。

 世界各国に存在するが、その中でも特筆される勢力が盟約を結び、【九十九つくもがたり】という国際協会を成している。その総意は “情報統制”、“人類の守護”、“妖魔の絶滅”という原則に従う。一般社会に妖異の存在を知らせず、人類の平穏を存続させ、果ては地球において全ての妖魔を一掃するという大望である。

 日本では【院】という機関が“九十九語り”に所属しており、地球五指に入る筆頭勢力とされる。飛鳥時代に銘打たれ、令和現在まで活動は止まっていない。


不老

 老いず、病に罹らず、生命力に溢れ、傷を負っても即座に治癒する。しかし寿命は存在するため、人間なら百年程で死を迎える。つまり、定命を万全、健やかに生きられるという程度に留まり、心臓などを潰されれば致命傷となってしまう。その儚さを不死者からは“一夜花ひとよばな”などと呼ばれ蔑まれている。

 術師と妖魔の多くがこの状態に達しており、異質な壮健さは世人からの迫害に繋がることが古今に多い。そして先述したように、術師は個として多数を凌ぐ。ならば、虐げた側がどれ程の報復を受けたかは想像に難くない。

 不死を目指す者にとって、寿命は限界を破るために費やされる。時間を掛けても不死に成れないなら潔く死ねという理は厳しく、永遠の命とは血塗られた美酒であると語られている。

⁑作中該当者

枯葩家:タダシ、カズサ、クラウド、マコト


不死

 夢幻とされる生命の永続性。不老と不死では、只人と術師以上の差があり、到達する者は極稀である。彼らには寿命も、致命傷もなく、自らの死を非現実的なものと捉えており、生への執着も死の恐怖も感じず、終わりのない渇きだけを敵とする。同じ不死者に殺されるか、或いは、自分が何者であるかも忘れてしまう永遠の果てまで世界を彷徨い続ける。

 気紛れと快楽主義が極まった振る舞いをする。俗でも超凡でもある予測不能な有様は、広く人々から“神”や“魔”と形容されることがある。定命の者から見て、その苦楽は測り知れないが、彼ら自身は永遠を格別の生涯として誇りに思っている。

⁑作中該当者

枯葩家:邑仁、詠風羽姫、正悟、結寿葉

別時空の枯葩家:邑仁、詠風羽姫、嚇盈、弦雅、夏緑、珠祢、浮春、登夜乃


神格

 人間と妖魔、双方の上位互換であり、疑似的な英傑でもある。自身を害する者へ罰を与える権能や、高強度の不死性などが特徴に挙げられる。宇宙最高の種族であるが、神性は“精霊”に依存しているため、下位存在からの“解釈”によって属性を改変されてしまう恐れがある。すなわち完全とは言い切れない。

 神の御名は四から八文字の漢字で成り、姓を持たない。名の長短は力の大小を表す傾向がある。稀に姓を持つ神もある。

 尚、“神”という言葉は上位存在を形容する上での例えとして使われることが多く、混同もあるだろう。

⁑作中該当者

枯葩家:詠風羽姫

別時空の枯葩家:詠風羽姫


家門

 枯葩家の他にも、常夜の名家は存在する。枯葩家に匹敵するものは無いが、それでも世界を滅ぼすに足る強大な勢力はある。一族として群れる術師には早期に対処しなければ、後に深刻な脅威へと発展する例が珍しくない。

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