第19話 表ヒロミチ総統の矢紙

 パレスの回廊を歩く。

 ゆっくりと、静かに。その手に力を握りながら。

 少年は、大聖堂を目指す。



ーーーーーーーーーーーーー



「死ねっ!」


 ヒロミチの握る刀の切っ先がヒロミチの鼻先をかすめる。


「フン、ファイナルエディション風情が」


 ファイナルエディションの振りかざす漆黒の太刀。松田タクヤの造り出した、人造兵器『深界の戒め』である。


「ベスチバンゲを処分してくれたのは貴様だったか。ファイナルエディション」


「ざけるな!」


 “最初”のヒロミチが迫る漆黒の太刀をシャーペンの芯で受け流す。


「くっ! まだまだぁ!」


「熱くなるな、ガキ」


 シャーペンの芯を指の間に挟み、飛ばす。

 弾丸の如く飛来するそれを、ファイナルエディションは刀で弾き落とす。


「無虹黒天剣!」


 剣尖から漆黒の波動が撃ち出される。分厚く重い、闇の波動。


「ダークネス・ユーヴィ!」


 オリジナルは天に指を掲げ、振り下ろした。

 視認の不可能な斬撃が、黒い波動を真っ二つに切り裂く。


「所詮はこの程度か、ファイナルエディション君」


「チッ……」



ーーーーーーーーーーーーー



 階段を降りる。

 足音も立てず、壁画の上に影を映して。

 少年は、大聖堂を目指す。

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