第42話

「かすみちゃんはどうなの?」


「私も、誰とも付き合ったことないし、誰かに好きって言ったことも、言われたこともないの」


「それ本当? こんなに可愛くていい子なのに、信じられないな」


「私なんて可愛くないです」


柊君って、隣のおじさん並みに私に甘い。


「そんなことないって。花火の日は特に可愛かったよ。眼鏡を外せば、もっと可愛くなるよ」


「あの日は、美容師をしているおばさんがヘアメイクをしてくれたから……」


「まあいいや。かすみちゃんはこのままでいいよ。誰かに好きになられても困るから」


今までもなかったんだから、そんな心配いらないと思う。


「あっ、それと、学校では俺達の関係は、ただの幼なじみで通そうね」


ああ、やっぱり。こんな私と付き合うなんて恥ずかしいよね。


あっ、そもそも付き合おうとは一言も言われてなかったんだ。


「なんか誤解してない? 俺達が付き合ってるって知られたら、俺が学校にいる間はともかく、卒業したらかすみちゃんを守れる自信がないから、学校では内緒にしようって言ってるんだよ」


「私達、付き合うの?」


「何言ってんだよ。今更嫌だとは言わせないからね」


「はい」


ようやく安心して頷くと、柊君も嬉しそうに顔を綻ばせた。

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