第39話

そう言われて、想像してみた。


柊君と兄妹だったら……こんな素敵なお兄ちゃんがいたら、幸せだと思う。周りにも自慢したくなる。


お兄ちゃんとして間違いなく好きになる。


その気持ちがどんどん大きくなって、奈緒ちゃんと同じようになっていたかもしれない。そして、柊君を苦しめていた。


「私も、柊君と兄妹じゃなくて良かった。奈緒ちゃんと同じように、柊君を好きになって、苦しめていたかもしれない」


「かすみちゃんと奈緒は違うよ。逆に俺の方が気持ちを抑えられずに、かすみちゃんを苦しめていたかもしれない」


「そんなこと……」


優しい柊君に限って、そんなことはないと思う。


奈緒ちゃんに対しても最後にきついことを言ったけど、なんでも彼女に合わせて言われるがままだったんだから。



「ここが俺の部屋。入って」


エレベーターを降りて、廊下の一番奥のドアの前まで案内される。


「大丈夫、何もしないから」


一瞬、入るのに戸惑っていたら、柊君がそう言って少し笑っている。


「今はまだね」


続いて聞こえてきた言葉に、踏み入れる足が止まった。


「何してんの? 入ってよ」


クスッと笑った柊君に手を引かれた。


「どうぞ、上がって」


「は、はい」


男の人の独り暮らしの部屋に入るのが、こんなに緊張するなんて知らなかった。


健人の部屋には何度もあるけど、家族もいるし、あれはノーカウントだ。

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