第15話

「もういいから、頭を上げてよ」


さっきから通り過ぎる生徒達が、何事かと私達をチラチラ見ている。こんな所で目立ちたくない。


「かすみが許してくれるまで、このままでいる」


「バスケの試合に来たんじゃないの? 早く体育館に行きなよ」


「嫌だ。かすみが絶交を取り消してくれるまで、ここを動かない」


「も~、わかったから。とりあえず頭を上げて」


「許してくれるか?」


健人がやっと頭を上げた。


「……うん」


あの時は絶対許さないって思ってたんだけどな。

一年経って、怒りや悲しみは癒えたみたいだ。


「じゃあ、昔みたいにバスケの応援してくれよ」


嬉しそうな笑顔をみせる健人に手を引かれて、体育館の方へと向きを変える。


――あっ!


すぐ近くにジャージを着た会長が立っていた。


「い、いつからそこに居たんですかっ?」


健人の手を振り払った。


「安西さんが彼に呼び止められた時から」


「……立ち聞きですか?」


「うん、まあ、お互い様だよね」


屋上のことを言っているんだろうけど、私は聞きたくて聞いてたんじゃないのに。

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