第16話
「三浦さんですよねっ」
健人が目を輝かせて、唐突に会長に話し掛ける。
「俺、中学の頃から三浦さんのプレーに憧れてたんです。今日の試合、楽しみにしてました!」
そういえば、会長がバスケ部のエースだって、奈緒ちゃんが自慢していた気がする。
会長も体育館に行くところだったんだ。
「そう、ありがとう。君、安西さんの友達?」
「はい、幼なじみの高遠健人です。一年間、絶交されてたんですけど」
恨めしげな目で私を見る健人。
「何よっ。まるで私が悪いみたいじゃない」
フンッと顔を背けた。
「安西さんでも怒ることあるんだね」
会長が私を見てクスッと笑っている。
「こいつ基本お人好しなんですけど、俺にはちょっとしたことで怒るんですよね」
「健人が怒るようなことするからでしょっ」
「仲いいんだね」
会長がそうつぶやく。
「一年間絶交してたくらいで、俺達の仲は変わりませんよ。なんせ、物心ついた頃から兄妹みたいに育ったんですから」
「そうか、それは羨ましいな」
その言葉は、会長の心からの声のように感じた。
ひょっとして会長は奈緒ちゃんにずっと妹でいてほしいと思ってるのかな。だったら、どうして結婚を拒否しないの?
彼女のお父さんが高校合格のご褒美のように結婚を許すことも変だし、嫌なら嫌だと言わない会長も理解できない。
「さあ、行こうか」
会長に促されて、疑問を抱えたまま体育館に向かった。
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