第2話 ダンジョンにて
「これが探索者カードね」
「「はやーい」」
最寄りの役所にて。
俺とココネは探索者資格を受け取る。
ダンジョンへ入るために必要なそうだ。
行ったのは、身体測定とか講習とか。
所要時間はほんの一時間程度。
「探索者はいくら居てもいいからね。国一番の事業として入口を広げているの」
「「へー」」
でも、役所のお姉さんは人差し指を立てた。
「繰り返すけど、まだ一般探索者だからね」
「「はーい」」
探索者には、一般探索者と上級探索者がある。
大抵のダンジョンは一般資格で潜れるけど、一部の難易度が高いダンジョンは上級資格が必要だ。
講習で習ったことを覚えてて偉い。
何はともあれ、探索者資格ゲット。
これで正々堂々と潜ることができる。
一見、人にしか見えないココネも一応資格を獲得した。
やる気になったのか、「力づくで侵入します」とか言ってのを止めて正解だった。
「それと、要望のレンタル配信機材ね。壊れたら弁償してもらうけど、元通りなら料金はいらないから」
「「すげー」」
さらには、機材のレンタルまで出来た。
珍しい物が記録に残れば、界隈に恩恵があるからだそう。
国をあげての事業とはこういうことか。
……だからって、ココネは早速ガチャガチャいじるのやめてね。
機械
「じゃあ行こっか」
「あ、機材っ」
ココネから取り上げて、俺たちはダンジョンへと足を踏み入れた。
★
ダンジョンに潜り、しばらく。
「そりゃっ!」
「ぷよー!」
スライムを剣(レンタル)で斬り倒す。
俺はすかさず、スライムに剣をすっと差し込んだ。
「お、やっぱここでも取れる!」
剣で
主に装備などに活かせる、丸くて光る素材だ。
単純に綺麗なので、異世界では初級冒険者が贈るプレゼントとしても有名だった。
俺は『スライムの核』を持ったまま振り返る。
「無事に取れましたー。いぇーい、ぴーすぴーす」
「……」
でも、ココネの表情は
「主様、全然視聴者が来ません」
「知ってたよっ!」
俺は赤面しながら、スライムの核を地面に投げつけた。
意外と丈夫なので壊れはしない。
そのまま付近に腰を下ろす。
「簡単にはいかないかあ……」
俺たちは早速配信を始めていた。
先程ウキウキで作ったアカウントで、レンタル機材を使って。
俺だって最初から期待してたわけじゃない。
それでも100人ぐらいは来てくれると思っていた。
だけど、それすら甘かった。
「現在、同接0です」
「がくっ」
さすがは覇権コンテンツ。
エンタメの最上位だけあって、競争率も高い。
ぽっと出で人気が出るほど、簡単な世界じゃなかった。
「やっぱ、もっとすごいことしなきゃ無理かー」
「かもしれませんね」
俺はバッグから大量の『スライムの核』を取り出す。
その辺のスライムから
だけど、コンテンツとしては弱いんだろうな。
「どうされますか? 主様」
「うーん……」
最初はココネに探索させたりもした。
やっぱり、野郎より美少女の方が映りが良いじゃん?
でも、結果は変わらず。
ちなみに、ここは最寄りのD級ダンジョン。
選んだ理由は、家から近いから。
あと力を失った俺でも戦える。
「今日はもうやめよ……心折れた」
「はい。主様」
「おつでーす」
カメラに元気のない手を振る。
もはや誰に
すると、すぐさまココネは隣に座ってくる。
「もう主様を甘えさせて良いのですねっ!」
「好きにしてくれ……」
いつもの俺なら恥ずかしがっていただろう。
でも、今はこの柔らかい感触だけが心の支えになった。
「まあ、誰も見てないし」
「結構進みましたからね」
探索開始からすでに二時間程度(半分は配信の設定をしていた)。
気がつけば、俺たちは中層辺りまで来ていた。
人はほとんど見かけない。
じゃあ、そろそろ帰るか──なんて思っていた時。
「「「うわああああああああああ!」」」
「「……!?」」
奥の方から、集団の叫び声が聞こえてくる。
ドドドドと騒がしい足音と同時に、すぐに人々が姿を見せた。
「逃げろおおおおお!」
「あ、あの、どうされたんですか!」
俺は立ち上がり、先頭の人にたずねる。
焦った男の人は、走りながら声を上げた。
「イレギュラーが発生したんだ!」
「!」
イレギュラーとは、異常事態のこと。
異常個体の発生や、魔物の大量出現などを総称して呼ぶ。
「異常個体だ! ありえねえ強さのサイクロプスが出たんだよ!」
「……!」
「そいつをボス部屋から放っちまった! こっちに向かって来てる! 君達も巻き込まれる前に逃げるこった! うわああああ!」
一つ目の巨人サイクロプス。
このダンジョンの中層ボスだったか。
素の個体でもC級はあるので、異常個体となるとそれ以上だな。
逃げていく人々を見送り、俺たちは顔を見合わせた。
「サイクロプスの異常個体か。今の俺の力じゃ……」
「主様。いざという時はこのココネが」
「!」
すると、ココネが両手を広げる。
その瞬間、辺りがひゅおおおと冷えた気がした。
ココネは所々に氷を帯びている。
そんな時だ。
「「「うわああああああああああ!!」」」
「また来た!?」
集団の
さっきの人達より強そうな連中だ。
でも、慌て具合はさっきの比じゃない。
「どうされたんですか! イレギュラーですか!」
「ああ! けど、あれはそんな次元じゃねえ……!」
ガタイのいいおじさんだ。
だけど、焦り方が
「サイクロプスの異常個体が出たらしいから、俺らが討伐に向かったんだ。束になればギリギリ勝てる! けど、そいつが
「え?」
おじさんは青ざめた表情で声を上げた。
「燃え盛る羽根が見えたと思ったら、階層が一瞬で火の海に変わったんだ!」
「ん?」
「お前たちも早く逃げろ! あんなのは魔物じゃねえ、
そうして、爆走していく第二陣。
彼らも見送り、俺とココネは再び顔を見合わせる。
「……行くか」
「はい」
ココネもこくりとうなずく。
きっと同じことを思ったんだろう。
((めっちゃ心当たりある……))
見ていないのに、聞いただけで景色が鮮明に浮かんだ。
そうして、俺たちの足は自然に奥へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます