現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~
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第一章 魔王だと勘違いされています
第1話 帰還した現代
『これで最後だ!』
剣を持った俺が、巨大な闇を斬り刻む。
そんな場面で、俺はびくっと体を起こした。
「はっ! ……夢か」
周りを見渡せば、現代の自室。
ボロい部屋の窓からは日が差し、体は布団に包まれている。
まあ、夢というより記憶といった方が正しいか。
実際に起きた事だからな。
俺が異世界を救って数日前に帰還したことは。
なんたって──
「おはようございます、
「……は、ははっ」
従魔がこっちの世界まで付いてきたんだから。
★
「好きだねー、おにぎり」
「コンビニのおにぎりが一番です! はむっ」
起きてから少し、コンビニ帰りの道。
俺が笑うと、隣の少女はおにぎりを
雪のように白い肌に、
全体的に“氷”のような雰囲気を持つ少女だ。
フードを被ってなければ、注目の的だろう。
この子は『ココネ』。
一言で言えば、俺の“
「異世界のもてなしも、おにぎりの前には完敗ですっ!」
「そりゃ安く済んでいいや」
ココネと話しながら、ふと空を見上げる。
自然と頭を巡るのは、つい数日前までの出来事だ。
中学を卒業してすぐ、俺──
勇者召喚というやつだ。
最初は動揺したものの、両親は蒸発し、現実で路頭に迷っていた俺にはちょうど良かったのかもしれない。
それから地獄のような日々を生き抜き、魔王討伐の宿命を果たす。
さぞかし大層なご
だけど、今度は付け過ぎた力を危険視され、俺は処刑された。
そうして、現代に帰還したわけだ。
「どうしたのですか? 主様」
「……いや」
正直、辛かった。
でも、目覚めて隣にココネがいたのは、心の支えになった。
一緒に来た方法は教えてくれなかったけど。
そして、帰還すると不思議な事がいくつか。
まず、こちらの時間は一日しか経っていなかった。
異世界で成長した姿は戻り、中学卒業したての姿というわけだ。
だからなのか、ココネはさらに甘くなった。
「分かりました。主様はぎゅーをご所望なのですね!」
「はい?」
「素直に言ってくださいまし。ほらっ」
「ちょっ、ここ道端だからー!」
今のココネは俺と同じぐらいの背丈(まだちょっと勝っている)。
いや、俺が縮んだというべきか。
普段は俺がなでていたのに、いつの間にか立場が逆転している。
「って、あれは」
衝撃の事実はまだある。
俺たちは音が聞こえた方に視線を移した。
街中の大きなモニターだ。
『本日は、新たに出現したダンジョンの調査に来ています!』
現代にダンジョンという迷宮が存在していること。
しかも、それが日常と化していること。
ダンジョンが発生したのは、何十年も前の話だそうだ。
「主様は知らないのですよね」
「そうなんだよねー」
信じられなかったけど、数日も経てば受け入れるしかなくなる。
召喚前と文化レベルがさほど変わらないのは、不幸中の幸いか。
とはいうものの、やはり違う点はあった。
中でも一番
『
ダンジョンでの様子を生配信するエンタメらしい。
召喚前もスリリングな動画とか流行ってたもんな。
ダンジョンを疑似体験できて、推し活もできるなら人気になるわけだ。
また、ダンジョンの
強い探索者の有無が国力を左右するほどで、記録はどれだけあっても困らない。
そのため、数年前に
「人ってすごいねー」
「ですねー」
だけど、俺はダンジョン配信から目を
戦闘はしばらく
──だからこそ、余計に驚いた。
「主様、あれを見てください!」
「ん……え?」
また目を逸らした俺を、ココネは引き止めてくる。
再びモニターを振り返ると、見たことあるものが映っていた。
それもたくさん。
『『『グギャー!』』』
目に付いたのはダンジョン配信者、ではなく。
それを
「あれって“魔族”か!?」
「はい。間違いないかと……」
魔族。
異世界で俺たちが戦っていた敵種族だ。
最後はその王──魔王を倒して世界は救われたはずだった。
「なんでこの世界に……」
どうやらこの世界では『魔物』と呼ばれ、ダンジョンで出現するらしい。
地上に出て来られないのは、せめてもの救いか。
だけど、気にならないはずがない。
「調査してみるべきなのか……?」
「ですが、主様はもう」
「……ああ」
異世界での俺は、血の
勇者らしい立派なものだ。
あれのおかげで魔王に勝てたとも言える。
でも、帰還した際に能力は全て
姿が戻ったことに由来するのか、何なのか。
今すぐに答えは出ないだろう。
「もうお無理なさらなくても……」
「ココネ……」
ココネは俺の手をぎゅっと握ってくる。
辛い事があった後で心配してくれているんだ。
俺もまだ
「ありがとう。この世界は平和そうだし、何か仕事を見つけて──」
なんて会話をしていた時、ふと通行人の話が聞こえてくる。
「すげえよなあ、ダンジョン配信者」
「あー強い奴って
「どんだけ稼いでるんだろうな!」
ん?
「トップはとんでもない額稼いでるらしいぜ?」
「覇権コンテンツだしなあ」
「もう芸能人なんて話にならないよな」
そうして過ぎて行った者たちを見ながら、すーっと息を吸う。
それからココネへと向き直った。
「──ココネ。話がある」
「な、なんでしょう」
「俺はダンジョン配信者になる」
「主様!?」
ココネが珍しく声を上げる。
久しぶりに目が点になるほど困惑していた。
ダンジョン配信者がそんな儲かるとは思わなかったんだよ。
でも、よく考えれば、国を挙げての事業なら納得はいく。
しかも、俺はもう勇者じゃないんだ。
こっちの世界の俺は、中卒で両親が居なくて、就職先も決まってない。
ぶっちゃけほぼ詰んでる。
「悪いな。俺の決心は固い」
「目が“お
だったら、少しばかり知識を生かしてもいいじゃないか。
勇者の能力は失った。
それでも、何千何万と戦った相手なら出来ることはある。
「あの、辛いお気持ちとか、悲しい思いっていうのは!」
「大丈夫。もう全部乗り越えた」
「さっきまでのお話が、全部フリになってます~!」
こうして、心配するココネを振り切りながら、俺は早速ダンジョンへと向かった。
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