第24話
チャマが藤原邸で過ごすようになって、しばらく経った頃のことです。
珍しく夕食の時間に、藤くんのお父さんが家にいました。
「不出来なものですが」と、おそるおそる食事を並べるチャマ。
「こいつの飯はうまいよ」と言う息子を黙って見つめた後、箸をとるお父さん。
ドキドキドキ。心臓が跳ね上がりそうです。
親子2人が食べるなか、自分の分など全くのどを通りません。
食事が終わり、温かいお茶を出した時、お父さんから声をかけられました。
――由文くんと言ったかな。
直『…はい』
――実に旨かった。基央にいつも作ってくれているようだね。礼を言う。
直『と、とんでもないです!おれ…僕はただ、藤くんと食べられるのが嬉しいだけで』
――そうか。
頬を染めたチャマを見て、お父さんは少し笑ったように見えました。
そしてすぐ「出かける」と立ち上がり、出ていきました。
直『はぁ~~~』
気が抜けたように椅子にへたり込むチャマに、藤くんは「おつかれ」と笑いかけます。
直『ねぇ、俺大丈夫だった?お父さんに気に入られる感じだった?』
藤「大丈夫だって。飯うまかったって言ってたじゃん」
直『ならいいんだけど…』
そこへ、先ほどまでいたお父さんの側近のおじさんが戻ってきました。
驚くチャマの足元にスッとひざまずき、小さな箱をうやうやしく捧げます。
――組長から、姐さんにお渡ししろとのことです。
直『えっ』
藤「チャマに?何だろう」
直『えぇと…ありがとうございます。いただきます』
おじさんが去った後、開けてみた小箱から出てきたのは、外国製の煙草の箱でした。
正直、チャマからすると藤くんが煙草を吸っているのはあまり嬉しくないことなのですが。
まぁお父さんからなら仕方ないか、でもなんで俺に?
そう思って触ってみると、何か違和感がありました。
藤「あれ?もしかしてこれって」
直『ん?んー?あ、わかった!シガレットチョコだよ』
藤「ええ…どうして本物じゃねんだ、あの親父」
ぶつぶつ悪態をつく藤くんの横で、チャマはちょっと笑ってしまいました。
この家でこんなものを喜ぶのは俺ぐらいだろう。
というか、これは「息子に禁煙させてくれ」というメッセージかもしれない。
いやきっとそうだ。わざわざお父さんからのプレゼントだもん、きっとそういう意味だよ。
直『ふーじくん。こっち向いて?』
藤「ん?…あ」
シガレットチョコの細い紙をくるくるとはがし、中身を取り出しました。
甘くて茶色い細長いもの。それを口にくわえて―――
直『…ん。んぅ…ぁ、あ…』
藤「自分からキスねだるなんて、積極的じゃん」
直『あ…ちが、ぅ…ふじく…、チョコ、食べてよ…たばこじゃ、なくて…』
藤「…ふん。食うよ、全部」
直『あぁっ』
舌の熱で溶けたチョコレートが、お互いの口の中で混ざり合います。
甘くて強い香り。むせかえるような存在の彼。
直『ぅあ、ん、藤くん…』
藤「親父のやつ…おまえのこと、認めやがったな」
直『え?え、そんな…あぁっ!』
藤「“姐さん”なんて呼び方…」
直『あっ!あ、ぁ、ふじっ、く…っ』
新しいチョコレートが乱暴に剥かれ、口に押し込まれました。
そのままつながる熱。無理やりの行為のはずなのに、とろとろと体内をかき回す愛しさ。
直『ふじく、藤くんっ…あぁ、や、いっちゃうぅ…』
藤「ふざけんな。まだ俺は全部食ってねぇ」
直『や、やぁっ!あぁ、だめ、もぉ、あぁん…』
チャマの胸に乗せられ、体温で溶けていくチョコレート。
藤くんの舌がゆっくりとその上を這います。
直『あぁ…っ!あ、あぁ…』
藤「おまえごと、丸ごと…食ってやるよ。…だから俺のも食え!」
直『ああぁぁっ……!!!』
深く穿たれ、チャマは声を抑えることも忘れて高みに達しました。
その直後に藤くんの体がふるえる様が伝わってきて、わが身の幸せを実感する夜でした。
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