~Interval~
side藤
第4話
再会した日は、朝から細かい粒の雨が降っていた。
高校の同級生が集まる飲み会なんて、普段の自分だったら面倒くさがって絶対行かない。事実、ヒロの姿はなかった。
それがあの晩に限って、ふと気まぐれを起こして参加してみた。
…気まぐれ。
魔が差した、とでも言うべきか。
開宴直後は、正直あいつのことなんか全然気にかけていなかった。
というか、忘れてたんだ。いるかいないかも分かってなかった。
数年ぶりに会う連中が、「今何してんの」とか聞いてくるのを適当に相手して、適当に飲み食いして…
1時間も経った頃だったか。
何となく、目にとまったのは。
遠くの席から見た印象は、「ずいぶんきれいなやつがいるもんだな」だった。
男とか女じゃなく、ただただきれいだと思った。
裏表のなさそうな笑顔、人懐っこい声、艶めく髪。そして何より、まっすぐに正面を見つめる大きな瞳。
白い手に似合うオレンジ色のカクテルには、赤いチェリーとともにスティック状の薄い氷が何枚か差し込まれていた。
藤「おまえ…、直井か?」
直『…藤くん?』
吸い寄せられるように近づいて、それから。
止められなかった。
何がそんなに自分を突き動かすのかもわからないまま、ただ目の前のきれいな人間と接し続けたい、それだけだった。
藤「久しぶり…だな。元気だったか」
直『うん』
藤「おまえ今、どうしてんの」
直『どうって…働いてるよ、普通に大学出て。勤め先は、ここからわりと近くにある会社なんだけど』
高校時代、俺たちは付き合っていた。
いや、付き合っていたと言えるのかどうか。
酷い言い方をすれば、あいつが一方的に俺のことを好きで、俺はそれに文字通り「付き合ってやっていた」だけだったと思う。
それなのに。再会した瞬間、その立場は逆転して。
藤「…もうすぐ、お開きだな」
直『そ、だね。二次会もあるみたいだけど』
藤「由文」
直『えっ』
困ったように笑う顔をそのまま側に置いておきたくて、昔の呼び名を使った。
卑怯かもしれないと思いつつ。後先なんて、考えようともせず。
藤「良かったら、この後2人で…どうかな」
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