第23話
藤「それで、今までどこにいたんだ」
升「うん」
親兄弟も知人も失い、身を寄せられる場所などどこにも無かったはずなのに。
直『島原の地主さんのご隠居夫婦が匿ってくれてね』
増「そうそう。ちょっと怪我とか火傷してたこともあって、しばらくお世話になってたんだ」
直『昔からの分限者の家だから、お上もそこまで厳しく追及してくることはなかったよ』
そうして、息をひそめて待っていたのだ。
情報を集めていたのだ。
生きてまた、仲間に会うために。
藤「…ありがとう」
直『え…?』
藤「もう…おまえたちが居てくれさえすればいい。ごめんな、散々振り回して…」
増「…そんなふうに言わないでよ。大丈夫だよ、こうやって生きてまた会えたんだから」
そんな会話を気恥ずかしく感じたのか、升が由文の持っていた刀に手を伸ばす。
見覚えがあるわけだ、それには小西家の家紋が入っていた。
直『あ、それいいでしょー。俺がずっと使ってたんだぜ!』
升「原城からずっとだよな」
増「うん。こないだまでお世話になってた家でも、少しは稽古してたんだよ」
直『あと、ちっちゃい男の子がいたから、チャンバラごっことかしたりしてさぁ』
増「あ~、あの子可愛かったよね!」
藤「…家宝で遊ぶなよ…」
話はいくらしても尽きなかった。
何でもないようなことでも、ずっと口に出して笑い合っていられた。
直『ところで、藤くんたちは今どうやって暮らしてるの?』
升「あぁ…まぁその、半農半漁くらいかな。あの時一緒に生き残った人たちと協力して、また一からやり直しだよ」
直『…これから俺たちもここに住んでいい?』
升「いいよ。というか、その方がありがたい。年貢はまだまだ重いし、労働力は多いに越したことはないからな」
増「えーっ」
藤「えーじゃない、働け」
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