第29話 初撃
「『聖剣降臨』」
そう言葉を発すると同時に、桐島は手から光を放つ輝く剣を出現させる。
見る限り明らかに現実に存在する代物ではない。
なるほど。それがお前の特殊能力か。
「僕のスキル、聖剣降臨。その効果は様々だが、ここではこの効果がうってつけだろう。『聖なる世界』! 僕は君を指定する」
――パーーン!
その言葉が起点となり、桐島から立体的な光のドームのようなものが広がっていく。
そのドームは俺を通り抜け、まるで一つの闘技場を形作るかのように、辺り一面を包んでいった。
“キタァァァァァ!”
“2人以外の存在を許さない特殊フィールド!”
“S級探索者が入る余地はもうない!”
“決闘に最適だな!”
“逃げることすら許さないの本当エグい笑”
“袋のねずみとはこのことだな”
それは空き地を内包する程に大きく広がっており、ドーム内部に桐島と俺、2人以外の存在が排除された。
妙な感覚だ。ここの空間そのものが特殊な状態で存在しているように感じる。
「滅也くん!」
「滅也!」
ふと後ろを振り向くと、バンバンと桃葉とみなみがドームを外側から叩いている様子が見えた。
どうやら桃葉とみなみはドームの外へ弾き飛ばされたようだ。
その方がいい。好都合ってなもんだ。
俺は軽く手を振り、2人へ反応しておく。
それを確認したのか2人はドームを叩くのを止めて、少し不安そうな表情を浮かべた。
「ははっ、これでここには僕と君2人しか存在し得なくなった。そしてここでどんなに暴れても周りに被害が出ることはない。決闘にはもってこいだろう? 使用制限があるからこのために取っておいたのさ!」
「へぇ……だからここで戦おうって判断をしたってのか」
「あはは! そうだよ! 僕にかかればどんな場所も戦場へと変化させることが出来るんだ! そしてさらに……『聖なる波動』! 闇を照らせ!」
――ボワァアア!
光のオーラのようなものが桐島が持つ剣から放たれ、ドーム全体へ流れていく。
波動と言い換えてもいい、何かしらの奔流が俺にも激しく降り注いでいく。
ただ何が起きたか分からねぇな。
別に危険を感じなかったから避けなかったが、特段何かが変わったとは思えない。
「君にかかっているバフや魔道具の効果の全てを打ち消す能力さ。これで君はS級探索者の力を借りることはできない」
「へぇ……なるほどな」
「いい能力だろう? 聖剣というのは悪しきものを裁くための能力。この剣の前では如何なる嘘も通用しないのだよ」
桐島は腕を広げて自慢するように言葉を連ねる。
中々大層な言葉書きの能力じゃねえか。
俺の発動してるかどうかも分からん『身体強化』とは大違いだな。
“やっちまえーー!!”
“始まるか……”
“天城滅也絶対強がってるじゃんww 内心ビクビクしてそうww”
“効いていないアピールか? 今更そんなことしてどうするんだよ”
“表情変えろよ。怖いんだろ? 帰りたいんだろ? 裏のS級探索者に今すぐ泣きつきたいんだろ?”
“自業自得だなぁ。大人しく無様な姿を見せてくれや”
チャット欄も異様な盛り上がりを見せている。
「みんなが君の敵だね。まぁ当然の結果だけど」
「関係ねぇ」
「ははっ、虚勢を張るのはよしたまえよ」
桐島は口角を上げ、こちらを小馬鹿にした表情を浮かべた。
「これで舞台は完璧に整った。今から日本中に君の醜態を晒してあげるよ! 世間を欺いた罪はこうも重いんだと言うことを思い知らせてあげよう!」
悦に浸りながら、俺を一方的に断罪するかのような言説を述べ始める。
まるで悪者を退治するヒーローのような態度だ。
さて……
「さぁ! 存分に戦おうか! F級探索者が何を出来るのか、見物だね! あっはっはっ!」
「周りに被害は出ないって言ったか?」
「ああそうだよ。だからなにも気にしないで戦ってくれ」
「そうか」
刹那。
「それを聞いて安心したぜ?」
「は――」
俺は桐島の眼前に迫る。
――バチィイイーン!!!
「ごおぉおおえ!」
俺の殴りをまともに食らった桐島は、派手に
“え”
“は”
“うそ”
“はぁああああああ!??!??”
“なんだってぇぇえ!”
“ええええええ!!”
「これで気兼ねなく、お前をぶちのめせる」
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