第15話 探索者ギルドにて
桃葉の変な行動を見送った後、俺は予定通りダンジョンに向かい魔物と戦いに興じた。
数百匹の魔物を倒し、3時間以上みっちり戦った俺は、指輪を使ってダンジョンの入り口に出る。
いやぁ〜良い気持ちだ。満足だ。
空はすっかり暗くなり、通行人もかなり減っていた。
「さて、ギルドに行くか」
ダンジョンの入場、出場の規則として探索者ギルドで再びライセンスを通す必要がある。
故に俺はいつものギルドに足を運んでいった。
「よぉ。あや姉」
「お帰りなさい」
少しの笑みを浮かべながらあや姉が受付で俺を迎え入れる。
ほぼ毎日のように会っているから特に物珍しいこともない。
あや姉にライセンスを渡し、ダンジョン出場の処理を完了する。
「おいおい、あいつ例の」
「このギルドでよく見かけたガキがあんなに強かったなんてな」
「F級探索者のくせして……」
俺が配信に映り込んだからか、周りの奴らがひそひそと噂をしている。
たまに話しかけてくる奴もいるくらいだ。
暇な奴らだな。
ただ前より人が少ないような……
「なんか人が減ったな」
「うーん1から説明しますとね、あなたがみなみちゃんを助けた時があったでしょう? あの時みなみちゃんは謎の穴に吸い込まれて深層に落ちていってしまったの」
「へーそうなのか」
「それで他の探索者が、『同じような目に遭ったらたまらない』と考えたようで、N252ダンジョンに行く人が激減しているのですよ。だからここのギルドに来る人も減ってるんです」
「なるほど」
そこで俺は聞くのを忘れていた事を思い出し、あや姉に問いただす。
「そういえばあや姉。なんでみなみに俺の居場所を教えたんだ?」
「うふふ。その方があなたにとって良い事があると思ったからですよ」
「またそれかよ」
「いつか分かりますよ。私の予感は的中率良いんですから」
煩わしい反応ではあるがこれは事実。あや姉の予感は結構当たりやがる。
まぁ外れることもあるし、そもそも予感すること自体が少ないから俺はあんまり気にしていないが。
「はい、今日は夜ご飯作っておきましたから。家で食べるのですよ」
「ああ、ありがとな」
いつもと変わらない世話焼き加減に辟易しつつも、弁当を作ってもらったのは素直にありがたい。買う手間が省けるしな。
あや姉から風呂敷に包まれた弁当箱を渡される。
「中身はなんだ?」
「それは帰ってからのお・た・の・し・み。お楽しみです」
少しおどけた態度で返答するあや姉。
なぜかテンションが高い。
「そうかよ。じゃあまたな。どうせ明日も来ると思うぜ」
あや姉に別れを告げ、俺は探索者ギルドを後にする。
弁当があるから近所のスーパーにはよらず、家へ一直線に歩いていった。
扉を開き自分の家の中に入る。
俺が普段過ごす居間にはあちこちに穴が空いてた。
昨日の戦闘の跡だ。
ただ暗殺者が見えない武器を投げまくったというのに、思いの外壁は壊れていない。
特殊能力で生み出した武器ゆえの現象だろうか。まぁどうでもいいか。
そこら辺のテーブルを引っ張り出して、その上に弁当箱を置く。
「飯の前に風呂だな」
魔物と戦ったことにより多少身体が汚れている。
服を脱ぎ捨て、浴室に向かう。
湯船には入らずにシャワーで髪、顔、体を隈なく洗い、風呂場を後にする。
タオルで水分を拭き取り、寝巻きに着替え、テーブルの前に座った。
風呂敷を解き、弁当箱を開ける。
パカッ
開かれた弁当箱の中身は幕の内弁当仕様。
黒胡麻が振り掛けられたご飯の上に鮮やかな鮭が乗せられており、おかずに牛肉のしぐれ煮、いんげんが混ざったおから、ポテトサラダなどが入っていた。
ちょこんと添えられたハート型のにんじんが何とも言えない気持ちにさせる。
冷蔵庫から天然水のペットポトルを取り出す。
「ごくごく……ぷはっ」
ふぅ、魔物終わりの水は格別なものがあるな。
続けて俺はあや姉の弁当を食べ始める。
「……うめぇな」
味はめちゃくちゃいいんだよな。
俺はあや姉が作った弁当を口一杯に頬張った。
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読んでいただきありがとうございます!
本日、【週間総合ランキング19位】です。
ありがとうございます!
また今まで載せてなかったのですが、自分はもう一つこちらの作品も連載しています
実力隠しの超越者〜NO.1クランの見習いメンバーが実は世界最強〜
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週1まったり更新の異世界ファンタジーです。
シリアスもあるものの、結構コメディー寄りの作品ですのでご興味があればこちらも読んでいただけると嬉しいです!
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