第6話
ちょっと可哀想な気もしたけど、確かにこれが主従の差だ。
とりあえず台所へ下がり、こっちも食事にすることにする。
増「まぁ、とっとと食べますか」
升「うん」
何しろ今までは使用人しかいなかったのだから、仕事のやり方も時間感覚もかなりルーズだったのだが、仕える相手が出来たとなると話は別。時間はムダに出来ない。
…のわりに、藤原がいきなりテーブルに崩れ込んでるけどね。
藤「あーもう、おまえマジで何なんだよ。どうしてここ一番てとこで噛むんだよぉ」
升「ロイヤルブレッ…ブレック、ファースト…」
増「………」
実情を知ってしまえば、割れ鍋に綴じ蓋な2人だ。ていうかそんな真顔で舌噛んでないで、スープ温め直してよ。
増「しかし、ローマの休日とはねぇ。上手いこと言ったつもりかもしれないけど…」
升「え?駄目か?」
きょとんとする秀ちゃんよりも、隣でパンに手を伸ばす藤原を意識しながら、俺は言った。
増「どっちかと言うと、マイフェアレディじゃない?」
升「…あぁ」
藤「………」
俺たちの視線をかわすように、えらいスピードで食事を口に詰め込んで席を立つ藤原。
増「もう行くの?」
藤「うん」
升「大変だと思うぞ」
藤「わかってる」
短いやりとりも惜しむようにそそくさと出て行く様子が気になって、俺も急ぐことにした。
増「ごちそーさまっ!俺も行ってくる」
升「おまえら…何だかんだ言って過保護だな」
増「何とでも言って」
そう言って笑ったら、「まー頑張れば」と笑い返された。
ありがと。
ベッドルームに戻ると、食べ散らかされた食卓が目に飛び込んできた。
片付けようとする俺を目線で制して、藤原が穏やかに微笑む。
藤「まぁ、お食事のマナーも追い追い…ですね」
直『…あのぅ』
藤「はい」
直『覚えることが山ほどあるのはわかりました。ここの主人になるっていうのも、何だかよくわかんないけどわかりました。でも、』
うん、言いたいことはわかる。
理不尽ながらもこの状況を受け入れようとして、でも大きな屋敷で過ごすということ自体に慣れなくて、頭の中がグチャグチャなんだろう。
直『ねぇ藤原さん、教えてください。俺どうしたらいいんですか?ご主人さまって、具体的に何をするんですか?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます