第9話
まぁ、わたしも母よりは姉っぽいとは思うけど。
保護した年齢が高かったし。
「会った時から好きだった。本心だ」
突然の告白。
「あ、うん」
ギラギラしている視線。
ドギマギしてしまう
「連れていくのは決まっている」
決まってるんだ!?
「わたしは出来たら住み慣れた場所に居たい」
出たくないのだけど。
「住めば都。おれのところも住めば快適になる」
快適と言われ眉を下げる。
「ううーん?」
疑問が頭を独占。
「良し、準備しろ」
準備しろ?
よくわからない。
「え?急だって」
困った。
グイグイとわたしの部屋へ押し出そうとしている。
されるがままに部屋へ入り、彼が出した入れ物にモソモソと服を入れていく。
そうしているとお昼になったので何か食べねばと立ち上がる。
くん、くんくん。
「いい匂い」
リビング方面から香ばしい香りがする。
ニオイのもとを辿り、足を動かすとユイスがフライパンを使って料理をしていた。
これまた、久しぶりの光景。
懐かしい。
ユイスはこちらを見ずに椅子に座れという。
言われた通りチョコンと行動する。
「うわ、美味しそう」
自然と頬が綻ぶ。
香りもいい。
「美味しいに決まってる」
彼はドヤッと自信満々で、皿に料理を盛る。
それが可愛くて内心、微笑んだ。
「食べていい?」
一応、うかがう。
丁寧に問いかける。
「あぁ」
彼はこくりと頷き、足す。
彼の作ってくれたので、丁寧に味わう。
咀嚼すると旨みが口内で溢れる。
「うん!美味しい!さすがっ!」
褒めると彼は肩をすくめて、お前には叶わないと褒め返ししてくる。
会わない間に褒めるボキャブラリーが増えたんだな。
「どうして都市にこだわるの?」
疑問を解消しないと、こちらも動きようがない。
「おれの研究するための施設と素材が豊富にある。お前が来れば完璧になる」
これでもかと、いいところだとプレゼンしてくる。
「そう……なら、行くよ」
その、こちらを考えに考えられた言葉に心が動かないわけがなかった。
「!──本当か」
カタッと動く相手は期待した目で見てくる。
それを見返して再度頷く。
すると、ぎゅっと抱きしめられてふふふ、と笑う。
わたしも彼を抱きしめ返すと「不自由はさせない」と耳元にくる。
不自由でも気にしない。
あなたが居るのならどこでも楽園になるよ、と得意げに秘密を囁いた。
「やっぱり弟子は師匠をなかなか超えられねぇんだな」
さらに腕の力が強くなった。
その力強さがホッとする。
悔しそうに呟くそれに、どうだまいったかと、彼へ自慢げに胸を膨らませた。
異世界で薬師をしていたら子供を拾ったのだけど数年後弟子に迫られていた〜そんなふうに育てたつもりはなかった〜 リーシャ @reesya
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