幻想世界での彷徨と癒しを描いた物語に、空を泳ぐクジラの詩が優しく寄り添い、読後の余韻がいっそう深まる一作でした。母に寄り添う子クジラの安心感から、空への憧れと旅立ち、やがて大海原を巡る姿には、主人公自身の心の揺らぎや成長が重ね合わさり、とても印象的です。
一方で、鉄錆の魚や人間の脅威に追われ、仲間を失っていく場面には、現実世界の残酷さや孤独が強く滲み、静かな悲しみが胸に迫ります。終盤、深い闇の中で「もう一度、空を翔びたい」と願うクジラの祈りは切なくも美しく、夢と現実、希望と絶望が交錯する独特の世界観を象徴しています。物語と詩が溶け合う幻想的な雰囲気に心を掴まれました。
どうかこのクジラの夢がどこへ続いていくのか、これからも紡がれていくことを心から願っています。