第4話
「ただいま~!!」
帰ってきたあああ……なんか今日疲れた。
配信終わったと思ったら最寄り駅乗り過ごしちゃってるし、終電終わってる時間になっててタクシーで帰ってくるとかブラックすぎんかうちの企業。いや、完全に私の不注意が原因なんだけども。
帰ってすぐ、ベッドに倒れこむ。眠い。
でもまぁさすがに風呂には入らなきゃなので、頑張って歩いて洗面所まで向かう。
そして、カツラをとった。そして、カラコンも外す。
そう、実は私もハーフなんだよね。フランス人と日本人の。
親二人は九州で暮らしてるから一人暮らしだけど、お母さんがフランス人でお父さんが日本人。
お父さんが留学した時に大学で一目ぼれして、毎日本気でアピールし続けた結果、『根性があって面白い人』だと認識されるようになってオッケーされたらしい。
うざいやつとかそういう方向に認識されないのはお母さんが結構珍しいんじゃないか……?と思った。
毎日しつこく話しかけられたら誰だってあんまりいい気はしないと思う。お母さんすげー。
だから、実はブロンドっていうのかな?そんな感じのいかにも外国人っぽい髪の色に、日本人特有の薄茶色の目を持って生まれてきた。
学校でからかわれたりして一時期嫌なこともあったけど、髪ふわふわだねっとよく親戚に褒められたりもするし、今はあんまり嫌いじゃない。
むしろちょっと気に入ってる。普段は黒髪黒目の地味なメイクしてるけど。
だって単純に目立つの嫌だし、受けた会社に「髪を染めるのは禁止です」とか言われたし。いや地毛なんですけど。
まぁでも、いま私が入っている会社はかなーり規則や決まりが緩い。髪染めるのおっけーだったりする。
私と同じ部署の人にも、髪を染めていたり、ピアスをつけていたりする人が何人かいたりする。
ほかにも、話したことはないけれど舌にピアスをつけていたり、何なら鎖骨につけたり。自分の彼女を仕事中に膝に乗せ、めちゃくちゃ堂々とイチャイチャしてるのに仕事はきっちりこなすような仕事脳リア充どもや、社内恋愛など割と何でもありだ。
私の髪や目のことは普段は隠してるけど、きっと隠さなくてもとやかく言われるようなことはないと思うし、ないと断言できる。なぜかって?私よりもやばいやつがそこら辺にごろごろ転がってるからさ!!
でも。
もし、私の知らないことで悪口を言われたらどうしよう。
もし、あることないことを噂として流されたりしたらどうしよう。
そんなネガティブな思考ばかりが浮かんではしぼんでしまう。
なぜなら、経験があるから。
この珍しい髪色のせいで、後ろ指をさされたり、目立ちたがり屋だと変な誤解をされたり、目をつけていじめの的にされたり。
普通の人とは少し違うというだけで、私はストレス発散に使える絶好のターゲットとなっていたんだ。
今の部署のみんながそんなことをするわけないってわかってる。でも、トラウマみたいにこの記憶は私の脳に根を張ってこびりついたまま、ずっと取り除けていないんだ。きっと、これからも。
だから、ライト君に会って、救われたような気がした。ライト君が使うⅤは、普通ではありえない髪色をしている。そりゃあ染めたらできるだろうけど、地毛であの髪色の人なんて世界中探しているのかわからない。
加えて、ライト君の人格。ふつうなんて存在しないだとか、周りの人に合わせてても自分を殺しているだけだとか、私の心に響いて、あったかく満たしてくれるような明るい言葉を話してくれて。
だから、好きになった。自分は今のままでいいんだって、言われたみたいですごくうれしくて。
一時期は、この髪色が嫌だった。染めてやろうかと思った。この見た目に産んだ親になにもされていないのに勝手に腹を立て、遠ざけた。いわゆる反抗期だったんだろうな。たぶんだけど。
だから私は、ずっとライト君のことを推し続けると思う。というか、推し続けるって決めた。
私に生きる希望を与えてくれた人を、ずっと大好きじゃないわけがない。引退したとしても今まで出してくれた動画を見返すし、ライト君が活動を続ける限り配信もプレミア公開も全部見て、一生ついていく。
誰に言われたからでもない、私が好きだから。
だから、一生好きなままでいる、それだけ。
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