第3話
「んん~、つっかれたぁ~!!」
やっと仕事が終わった……。
残業をすべて消し去るため、パソコンとにらめっこを続ける時間がやっと終わった。はよかえりてぇ。
「………待って今日って配信日じゃなかった!?今何時!?」
配信が始まるのは午後九時ちょうど。そして今は、八時半だ。
「電車の中で聞くしかないか……」
ほんとは家でリラックスしてグッズを腕の中で抱きしめながら耳の保養になるあの声を聴いて今日一日の疲れをチャラにする計画だったのに……!!!残業許すまじ。
こちとら推しの声がたとえ一日でも聞こえなくなるイコール死だからな??
早く落ち着いて配信を聴くために、早歩きで駅へと向かう。
もうとっくにオフィス内の人はまばらになっていて、信号待ちをする人たちもそんなにいない。
みんな、急いで駅へと向かう私のことを珍しそうな目で見るだけだ。
だってもうすぐ配信始まるのに急がずゆっくりしてるオタクなんている!?
配信は推しの生の言葉が聞ける、つまり本人の素の性格が結構出やすいということ。推しのことを知れる時間、それが配信。
なのに急がないとかおかしいだろ!!ありえん!!
異論は認める(?)!!!
ちょうどホームへと到着した電車に乗り、すぐさまスマホを開き待機場所にたどり着く。
もちろんイヤホンをすることも忘れない。
すると、ちょうど配信が始まった。
「こんばんは~聞こえとる?だいじょぶそか?」
あああああ始まった!!ライトくんの声だぁ!!!Ⅴが左右にぴょこぴょこしてんのかわいいかよてぇてぇぇ!!!??
>聞こえてますよ~!!
>こんばんは!!
>相変わらず声がいいですね……!
「声がいいって、俺の声が?ありがとーな、めっちゃうれしいわ!」
加速するコメント欄に、目を細めて笑うライト君。
今日は雑談配信とSNSで投稿していたから、きっとコメントと会話するような感じになるんだと思う。
つまりライト君の神聖で美しくて純粋できれいn(以下略)……とにかくめちゃくちゃすごい内面を知れる!!
ポケットから、とある手帳を取り出す。
毎回配信のお供となっている、「ライト君ノート」だ。
中には、これまでにライト君がSNSで投稿した場所がどこか、配信で話した内容、どんなものが好きか、などなど……現時点で公開されているすべてのライト君に関する情報がこれでもかというほど詰め込まれている。
ちなみに今、十冊目とかだったかな?
「現実での髪の長さ?結構長めにしとるで」
そんなライト君の声が聞こえてきたのを合図に、私は配信に集中することにした。
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