第51話

「ごめん」



私の頬に触れた手があまりにも冷たくて驚いた。ロウを見ると、なんとなく悲しくなった。


泣いてる。

待って待って。


ロウが、泣くの?



「彼女はもういいの?」


「いや付き合ったばっかりの相手が何年も待ってるわけないだろ」


「そ、それはわかんないじゃん」


「ばーか」



馬鹿!?

ムードぶち壊す? 私またロウにどんどん引き込まれて行ってる気がする。堕ちるところまで堕ちて。


優しく抱きしめられて思わず涙が出そうになった。洟を啜っていると「おい」と呼ばれて顔を上げる。



「なに?」


「鼻水垂れてんだろ」


「酷い!レディーに対して!」


「だったらティッシュくらい持ってんだろ」


「も、持ってるし!」



バッグの中をがさがさと漁っていると、私が見つけ出す前に鼻にティッシュを押し当てられた。グリグリとされて微妙に痛い。



「ちょっと!」


「どうせなかったんだろ」


「う」


「お世話役かよ俺は……」


「ねえ、ロウ逮捕されたよね?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る