第52話
「お前は相変わらず空気が読めないね」
「ヒナ兄は生きてたよね。つまり未遂だよね。そもそも正当防衛とも言える。過去のことも掘り返してたよね警察は。事情聴取はされたんだ、私も。でもロウが捕まってから私は一度もロウに会いに行かなかった」
「そうだな」
「申し訳ない気持ちになるから蓋をした。ごめんね」
「いいよ。このまま嫌われても仕方がないとすら思ってたし。待ってると思ってた、とか、本当は嘘。自信なんかねーよ」
ロウは私を抱きしめた。
優しく頭を撫でられる。
ヒナ兄のあの手とロウのこの手はどう違うのだろう? 人の手であることに変わりはなくて、かつて誰かを殺めた手であることにも違いはなくて、それなのにこんなに優しい。
「私たちは永遠に罪人だ」
本当は幸せになることなんて許されないのかもしれない。
背負い続けて生きていく。法律というのは勿論、大切だと思う。だからと言って罪の意識もないまま刑期を終えてまた犯罪を繰り返す人間よりは1%くらいはマシなんじゃないかって思ってしまう時もある。
――もう二度と罪には染まらない。幼い私たちは、その重さを知らずその時を生きた。
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