第50話

なんかムカついたから車を運転させて私は助手席に乗り込んだ。



帰り際、車を停めてあの公園のベンチに座った。とてつもなく寒いのに私たちはなにをしているんだ……と思ったけどそれは飲み込んだ。



ホットの缶コーヒー、苦くて飲めなかったあれが私はいま一番好きになっている。全部全部変わっているのに、変わっているのはロウを求め続けたからなんだと思う。



「ロウ老けたね?」


「黙れ」


「……私は大人になったよ」


「27だっけ?」


「28ですけど?」


「はは」



はは。じゃなくてさ。あんたも同じ様に歳とってんだからさって言いたくなる。


昔と変わらない。ロウといると話が弾んで、沈黙も苦じゃない。



「ビターで大人なコーヒーが甘く感じるほど、私はとーってもディープでエレガントな大人になりました」


「何言ってんの?」



ごほん。



「ねえ、私のことどう思ってるの」


「突然話変える辺り変わんねーなおい」



これでも一息置いたつもりなんだけど。普段女友達相手でも男友達相手でも同じように、私はあまり声を発さない。


昔から心を開けるのはロウだけだった。



「どうなの?」


「好きだよ」


「最悪だった」


「は?」


「最後のキスが、ヒナ兄だったから」



ロウに触れることも出来ず、私たちは消えた。この世界から一瞬姿を消した。それはあくまで私自身の夢と願望を含んだ表現。

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