第22話

「じゃあロウは“罪人”だったのね」



酷く低い声だった。

女口調でありながらその声は男そのもの。矛盾を感じた。そしてその笑顔。


少し不気味で怖い。



「ヒナ兄?」



嫌な記憶ばかり思い出していたから、なんとなくその影響でそう見えたのだろう。



「ロウと上手くいくといいね」


「うん……」



私のエゴを押し付けるだけでは、上手くいくはずがない。彼女が出来たって時点で諦めるべきなんだろうし……応援は嬉しいものか悲しいものか。



頑張れと言われたとしてもなにをどうしたらいいのか、というか、何も出来ない。



「ロウはまだ結婚してねーだろ」


「……急にキャラ変えないでよ。してないよ」


「そんなよその女から奪いとりゃいいだろ。とっととお前らが結婚してしまえ」


「そんな単純に言って……」



ロウと結婚って変。いまは結婚したいとか思っていないし、なんだろう。



適度な距離感を保ちながら同じように隣にいられたら十分かも。



結婚ってある意味では縛りなのか? だとすればそれでロウを縛れるなら……って歪んだ思考もあるよ。少しだよ。まあ離婚すりゃ終わりなんだよね……。


めんどくさいな色々。

私の頭の中が。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る