第9話

一旦自室に戻る。いや、ここも借りてる部屋に過ぎないけど。とりあえずその自室(仮)のベッドに寝転ぶ。



私が住むからってだけでベッドまで買ってくれた。微妙におかしい。しかも意外と高いやつ。安いパイプので良かったのに。てかもう敷布団でいいのに。



ロウの部屋にはあるけど、この部屋にはクローゼットがない。だからタンスまで与えてくれた。他にもたくさん。



高校生の頃からロウはちょっと変わっていたけど、相変わらず人に優しすぎる。見返りを求めない無償の愛ってやつが、なんともいえず憎たらしい。そして甘えてしまう。




ロウは幼少期に親に愛されず育ったと言っていた。ずっと愛情に飢えていて、だから彼女が何人もいたりしたのだと思っていたけど……今は、違うのかも。



ずううううっと一緒にいたのに、いつ変わり始めたのか全然気付かない。常に見ていると、その相手が太ったか痩せたか分かんないのと一緒。




たまに会う程度ならすぐに分かるのに。




私に触れられないくらい好きな人がいる。それが私だったらいいのに、って思う。淡い期待も無意味だけど、好きだから触れられないみたいなピュアな感情だったらいいのになああああ! と。



ああ、ははは。

馬鹿馬鹿しい。



「荷物詰めるかー」



ロウの家に来たのは高校生の頃。17歳くらい。受験勉強もここで一緒にしたけど、結局どっちも大学には進まなかった。



その頃のノートもあるし服もあるし、もう5年も経っているのだと思うと……ね。やばい! 泣きそう!



しばらく荷物をまとめて、疲れたからシャワーを浴びて部屋に戻る。




「!?」




ロウがいた。

私の部屋に。いや、カッコ仮だけど。

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