第8話

「だいたいね」


「なんだよ」


「ロウはロウって感じじゃないんだよね」


「は?」



ロウって言われると狼をイメージする私は中二的なのか分かんないけど、なんかこう、カッコイイ! みたいな。けどこの男はそういうんじゃない。



ベッドの端に座っているロウの隣に腰掛けて、私はロウの煙草を奪った。



「お前は珈琲も煙草も奪うよな」


「……」


「鬱陶しいのに、憎めねーんだよ。くそ」


「……?」



わしゃわしゃと頭を雑に撫でられ、髪がボサボサになった。そしてロウはそれを見て笑う。自分でやっておいてツボるとか。



「ねえ」


「んー?」


「ロウ、いままで世話になったね」


「出て行くのか」


「そりゃ、迷惑かけたくないし」


「ははっ今更かよ」



鼻の奥の辺りがツーンとした。

あ、くる、みたいな。涙が。



この男の前で泣くのは絶対にない。泣けば心配して「出て行くな」と言うに違いないからだ。



構ってくれるって分かってる。昔からの付き合いだからこそ、私がいろんな家をたらい回しにされたり巡ったりしていたのを知っている。



高校時代を思い出す。

私に手を差し伸べた、ロウを。



「また無理すんだろ」


「しない」


「ちょっとは無理しろよ」


「意味不明なんだけど。明日には出て行くから、彼女と仲良くするんだよ」


「葉月」


「なに?」


「あーいや、なんでもない」



なんでもないってなんだよ!

涙がこぼれそうだよ! ばーかばーか。


明日出て行って私どこへ行くんだろう。

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