第30話

「そうそう。そこのお姉さん。どう、この数珠を買わないかい?物凄い魔除けの効果があって悪縁や怨霊から、お姉さんを守ってくれるじゃろう。」


そう言って顔の前に持ち上げたのは、小振りだが仰々しく光を放つ数珠。


「…すいません、急いでて、」


「今なら半額にしてあげるから。本当に効くんだよ。」


……これはまずい。

なんとか断って早くこの場を逃れないと。


「ま、またの機会に。」


「お前さん、この数珠を買わないと大変なことになるぞ!」


「……大変なこと?」


突然、血相を変えてそんなことを言われると、いくら胡散臭くてもドキリとしてしまう。


「…お前さん、このままじゃと来世まで色恋沙汰とは無縁じゃぞ。」


「…はぁ?」


突拍子無くつきつけられた言葉に素っ頓狂な声が口から漏れた。

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