第29話

部屋の至るところに散りばめられた湊の欠片が湊が生きていた証を、もうここにはいないということをあたしに痛感させた。


だけど、眠っていた時の朧気な記憶の中で湊が“生きていてほしい”って、あたしに言ってくれた気がする。

ただの願望なのかもしれないけど、その朧気な記憶の欠片があたしを奮い立たせた。




◇◇◇




「ちょっと、そこのお姉さんや。」


「えっ、あ、はい。あたしですか?」


アパートへの帰り道。

いつも通る公園の前に怪しく佇むお婆さんが手招きしている。


“占”と書かれた立て看板に鈍く光る水晶。


………いかにも。

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