第31話

「わしは霊感も多少あってな、それでさっきからずっと見えてるんじゃが……お主の後ろに、霊がべったりついておってな。」


お婆さんは皺が刻まれた指で、あたしの背後を指差す。


「…まぁ、悪い霊ではないんじゃがそいつが、お主の色恋の縁をものすごい勢いでぶった切っていて、」


「……ふっ、あはは、あはははは!」


言葉の途中で突然大笑いしだしたあたしを見て今度はお婆さんが素っ頓狂な声を漏らした。



――――馬鹿だなぁ。




「いや、あたしの彼氏、本当に心配性だなぁって。」




一度は愛しい人が旅だった事実を受け入れることを拒んだ。

唯一の人がどこにもいない世界に何度も絶望した。


貴方が隣にいないことは寂しくて、きっと何度も折れそうになる。

だけど、貴方が迎えに来てくれた時に胸を張って笑えるように。

愛せるように、愛してもらえるように。




ずっと忘れないよ、その時まで。


君を愛していたこと、君が愛していたこと。

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