第8話

「…ん、」


「…おはよ、茅子ちゃん。」


重たい瞼を必死に持ち上げると、あたしを抱きしめるように寝ている彼が額にキスを落とした。

いつもより掠れた声と、何度も目を瞬かせている様子から彼も今起きたところなのだろう。


「おはよう。ふふ。」


「ん?なに?」


「ううん。」


「気になるなぁ。」


「何でもないってば。」


「茅子ちゃん、すごい悪い顔してる。」


「してないよ。」


ベッドに寝転がったまま、戯れあう。

なんてことないこの時間が理由もなく胸を締め付けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る