第6話

―――――“忘れないで。”





「…え?」


「………どうかした?」


すぐ隣から心配そうな声が届く。

あたしを抱きしめる腕に力が篭もって、キシ、とスプリングが鳴いた。


「……怖い夢でも見た?」


「………うん。」


「…そっか。」


あたしの背中を撫でる手があんまりにも優しくて、おもわず彼に擦り寄る。

彼から微かに香るシトラスの匂いと温かい体温は、心地よくて何故か愛しさが込み上げた。

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