第5話

「そろそろ寝よっか、茅子ちゃん。」


「……え?」


「眠いでしょ?さっきからずっとうとうとしてる。」


クスクス笑う彼にソファで、うたた寝していたあたしの額を細い指でコツンと小突かれる。


「……ここで寝る。」


ほとんど意識を手放しかけていたあたしには、もう寝室まで移動する気力は残っていなかった。

聞き分けのない子どものようなあたしを見て、またクスクスと小さく微笑んだ彼は、


「…しょうがないお姫様だなぁ。」


そうどこか嬉しそうに零すと、あたしを軽々と抱き上げた。


愛しそうに抱きしめてくれる腕。体温。

知ってる。

ーーーあたしはこの温もりを知ってる。


「………どこにも、行かないで。」


微睡む意識の中でそう呟いた気がした。

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