第54話

「そっか。なら好きな食べ物はなにかある?」


「…ハンバーグ、とか?」


「ハンバーグね。わかった」



ハンバーグを作れる材料は多分家にないので、帰りにスーパーによることにしよう。



「じゃぁ明日作って来るね。あ、でもあんまり期待しないで。私もそこまで料理が得意ってわけじゃないから」



あと一応保険もかけておこう。

最近のレトルト食品って味がドンドン美味しくなってるって聞くし。もしかしたら私の弁当よりそっちの方が好みだったりするかもしれないから。


家族以外に料理振る舞うとか初めてだな…。

明日弁当持って行って「おいしくないね」とか言われたら凹む自信しかない…いや、田端くんに限ってそんなこと言わないとは思うけど。


ちゃんと料理練習してから言えばよかったかな…と若干後悔し始める。



「期待するよ」



ぼそりと田端くんが呟いた。



「品川さんが俺のこと思って、作ってくれるなら絶対美味しいに決まってるから」



至極当然のように田端くんはいう。


う、嬉しいんだけどハードル上げないで…!!!



「明日、楽しみにしてる」



少年のように笑う田端くんを前に、私は絶対に明日の弁当作り、失敗できないなと思った。

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