第53話
「え?品川さんがお弁当を?」
「うん。勉強会のお礼も兼ねて…あ、手作りとか苦手なタイプだったかな?」
「そ、んなことない!食べたい!」
顔を明るくさせると私の手を握りしめていう。
さりげないスキンシップと整った顔が近づいたことで、私は少したじろぐ。
「品川さんが俺に弁当を作ってくれる…うれしいなぁ」
余程嬉しいのか、田端くんは私の様子に気づくことはなく、ふにゃりと微笑んだ。
は、破壊力がえぐい…。
心臓が早鐘をうつ。頬が熱を帯びたのがわかった。
そこで漸く状況に気づいたのか田端くんがバッと、猫のように跳ね退いた。
振動でソファーが軋む。
「ご、めん!つい…」
私より大きい体を縮こまらせて反対側の肘掛けに凭れ掛かる田端くん。その耳は真っ赤で、ああ、普段のかわいい彼だなと私はホッと胸をなでおろした。
かわいくない田端くんは色々心臓に悪いので、出来ればずっとかわいいままでいて欲しい。
「それで…お弁当なんだけどね。アレルギーとか嫌いなものとかあるかな?」
すっかり調子を取り戻した私は明日の弁当の具の話を田端くんに振る。
田端くんがちらりとこちらを見て「なんでもたべれるよ」と答えた。
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