第52話

「誰かと勉強会とかしないの?遊んだりとか」


「したことないよ。そもそも休日に誰かと遊んだり、家に呼んだりしたことなくて。だから品川さんが初めてかな」


「……そうなんだ」



田端くんの両親は仕事で夜中か朝方にしか帰ってこないらしい…ということは、もしかして、いつもこの広い家でひとりぼっち、なのかな?

広くて大きくて羨ましいと思ったけど、もしそうなら少し寂しそう。それに



「田端くんってご飯とか作らないの?」


「え?」


「ごめん。さっき冷蔵庫の中、見えちゃって」


「あ、あー……」



田端くんは苦笑いして頷く。



「料理苦手で…昔はよくお母さんが作ってくれてたんだけど、仕事で忙しいみたいでさ。

無理して頼むのも申し訳ないし、それでいつもああいうの食べるようにしてて」


「…そうなんだ」



そういえば昼ご飯はいつも、購買のパンを食べてたっけ。てっきりパンが好きなんだと思っていたんだけど、作れないから買っていたんだろうな。


少し考え込み、よし!と頷くとばっと顔を上げた。



「田端くん!」


「ん?」


「明日、私お弁当作ってきていいかな?」


「……え?!」



私の申し出に田端くんは驚いた顔をする。

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