第50話

「なら俺がそっちいこ」


「え、な、なんでっ」


「勉強、教えるのにすぐ隣の方が教えやすいから」



もっともすぎる意見に私は二の口を紡げず、押し黙る。

田端くんは私の内心などお見通しだと言いたげに笑みを浮かべた。



「大丈夫。なにもしないから」


「…そ、そう」



なんだか私が一方的に意識している気がして、少し恥ずかしくなる。

と、田端くんは意地悪そうな笑みを浮かべ、そっと私の耳に唇を寄せる。



「それとも、なにかしたほうがよかった?」


「しなくていいです!!」



声を上げて怒るが、田端くんはケラケラと笑うだけだ。

心底楽しそうに。


いつもはこんな感じじゃないのに。

なんだか今日の田端くんは少し意地悪だ。

じとっと睨めば田端くんは「ごめんごめん」と軽く謝ると勉強道具を広げ「さ、勉強しようか」といった。


こうして勉強会が漸く始まったわけだが

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る