第42話

「あ、私こっちだから」



分かれ道になって私は田端くんが行こうとした方向とは別の道を指さす。



「送るよ?」


「ううん。悪いから、いいや」



今から振る相手に、最後まで彼氏ムーブをしてくれるとは、最後まで優しいな。

いや浮気してるから優しくはないんだけど。なんて心の中で複雑な感情が漏れる。


田端くんは立ち止まったままこちらを見つめている。

そうして意を決したように口を開く。



「あのさ」


「…はい」



きた。



「迷惑じゃなかったら、これからも一緒に帰ってくれませんか」


「わかった…」



…って、え?



「ほんと?やった。じゃぁね。また明日」


「え、は?ちょっと田端くん!?」



浮かれているのか田端くんは私の声など聞こえないとばかりに手をぶんぶんふって立ち去っていく。

取り残された私はぽつんとその場に立ち尽くし。



「………は??」



ただただ困惑するのだった。

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