第41話

「って、聞いてる?品川さん」


「え?あ、ごめん。何の話だっけ?」


「人間失格の話。あれ毎日読んでるんだけど、昨日漸く第一の手記まで読み終わったんだ」


「えっ、ホントに読んでたの!?」


「当たり前。読んでみたら意外と面白くて

やっぱり難しい言葉ばかりだから読むのは大変だけど…読み始めてよかったなって思ってるよ」


「……そ…っか」



まさか本当に読んでくれているとは思っていなくて思わず驚いてしまう。


ああいう小説は、友人に紹介しても大概誰も読んでくれないものだから、正直その場のノリで言ってくれたのだと思い込んでいた。

なんというか、本当に律儀だ。



「品川さんはどう?漫画、読めてる?」


「う、うん。一応。独自設定があるから世界観でこんがらがることも多いけど、楽しく読めてるよ。

戦闘シーンとかも派手だし、見やすいし。結構好きかも」


「ほんと?よかった」



ほっとしたように田端くんは笑う。



「やっぱり好きな人に自分の好きなもの好きだって言って貰えると嬉しいね」



頬を緩めながら笑う田端くんに心臓が高鳴った。



田端くんは女子にモテるらしい。

きっとこういうところが好感が持たれる理由、なのかもしれない。

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