第40話

「ごめん。待たせちゃって」


「全然待ってないよ」



下駄箱前で待っていれば、田端くんがやってくる。

爽やかに手を上げて、声をかけてくれる彼は、最後に見た姿となんら変わらない。



「帰り道こっちだって聞いたから、一緒に帰れるかなぁって思って…誰かと帰る約束とかしてた?」


「前までは一緒に帰ってる人いたんだけど、最近は一人で帰ってて…」



って、あれ?



「聞いたって、誰に?」


「ほら、上野さん」


「え”、夏樹!?し、知り合いだったの?」


「三日くらい前かな?話す機会があってさ。その時にね。幼馴染なんだって?」


「まぁ、腐れ縁って言った方がしっくりくるかもしれないけどね」



なんて話を広げる。

ちらりと彼を見上げる。その横顔はいつもと変わらなくて

それでも、きっと私は今日フラれてしまうんだろうな、という予感を感じていた。


だって、いきなりこんなタイミングで下校の誘いをしてくるなんて可笑しい。

これはあれだ。最後に彼氏ムーブしてやろうっていう優しさなのだろう。

帰り道で別れるタイミングで交際についても別れを切り出されるに違いない。


いや、別に振られたって構わないけど…。

私だって、これでいいのかって悩んでいたところだし、それでもいい。

でも、まさかこんな終わり方になるとは。


まぁ、いい人生経験が出来たって思うことにしよう。

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