第35話

「恋は貪欲なやつが勝つのよ。アンタはもっと欲張りなさい!」


「…うーん」


「アンタだって田端くんのこと好きなんでしょ?」


「…」



夏樹の言葉に私は返答に困った。


好き…好き…?


確かに私は田端くんが好きだ。


でもそれは彼の求めている好きではないことくらい理解している。

理解しているからこそ、悩んでいるのだ。

本当にこのままでいいのか、と。


私が彼と付き合った理由は、彼氏がいるというステータスが欲しくて付き合っているから、私にとってこの関係は徳だ。

でも、田端くんは私が好きで付き合っているのだと思う。


当然、恋人らしいこともしたいと思っている…はず。多分。


でも私は田端くんが好きじゃないから、そういうことはあまり気乗りしない。つまり田端くんには徳がない。

それってなんだか不公平な気がする。


田端くんの大事な時間を私の私欲の為に消費している気がする。

ならさっさと別れればいいのだろうけど、私が振るのは、なんだか違う気がする…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る