第33話

「流石モテ男ね。じゃぁ次は放課後!もっかい教室行ってきなさい!確かあそこの担任話長いって有名だから」


「メッセージで約束とりつけた方がよくない?」


「よくない!こういうのはサプライズでやるから喜ばれるのよ!」


「はぁ…?」



私にはそういうのはよくわからないが、夏樹が言うならそうなのかもしれない。

正直突然押しかけたら迷惑じゃないかとも思ったのだが「好きな人が自分に会いに来て迷惑なんて思うわけないでしょ!」と力説されたので、大丈夫だと信じることにした。



そうして放課後



私が教室に行くと、まだホームルームは終わっていなかったようで、教室内にはしっかりと田端くんの姿があった。


よかった。これで誘える。


ホームルームが終わる。出てきた田端くんに声を掛けようと一歩踏み出す、が



「湊くーん!」



瞬間女子生徒数名が田端くんに駆け寄り、抱き着いた。



「今日予定ある?ないなら遊ぼうよ!」


「一緒に帰ろー」


「あのさ、明日のお昼さ~」



きゃっきゃと楽しそうに話す彼女たちはとても可愛らしい。



「ん?ああ、予定ならないよ」



そういって笑う彼も綺麗で。


なんだか春休みに私と遊んだ幼い少年のような笑顔を浮かべる田端くんではなく、別人の…かっこいい男の子に見えた。

だからだろうか。なんというかあの空間だけ空気が違って見える。

あの陽の気をバンバンに放っている空間に入り込んで、田端くんに声をかける勇気は生憎なかった。


もしかして彼の周りは昼も放課後もあんな感じなのだろうか。

だとしたら夏樹のいうサプライズとやらは私には一生できそうにないな…。

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